京王吉祥寺駅の解体 アスベストは大丈夫か?

 今回の一般質問で取り上げたのは、ビルの解体で飛散する可能性があるアスベストへの対策だった。アスベストが問題化していらい、封じ込めなどの対策は行われているが、対策をしていてもビルの解体時に飛散する可能性がある。飛散をさせないように法は定めているが、抜け道が多いことや違法解体もあり実際に飛散している例もあるからだ。
 近く、解体される京王線の吉祥寺駅ビル。建築年数から考えれば、とうぜんながらアスベストが使われているだろう。日々多くの人が利用する駅での解体だ。市が検査、監督することで飛散しないよう確実な解体工事にすべきと提案した。


■未だに終わらないアスベスト問題

 アスベストとは、天然に存在する繊維上の鉱物の総称で石綿とも呼ばれている。耐熱性や断熱性が極めて高いことから多くの工業用材料や建築材料として使われてきた。しかし、アスベストを吸い込むことによって肺がんの原因になることや心臓や胃腸、肝臓などの臓器の膜に腫瘍を発症させる「中皮種(ちゅうひしゅ)」の原因であることが明確になったことで1930年代からは欧米諸国では規制が始まった。ところが、日本では経済成長が優先されたこともあり規制が遅れ、1975年になってやっと吹き付けアスベストが全面使用禁止になり、2004年にアスベストを1%以上含む製品の出荷禁止となっている。
 これで一安心かと思えたが、2005年、大手機械メーカーの工場で従業員ばかりではなく工場周辺の住民にアスベストの被害が広がっていたことが分るなど「クボタショック」が起こり、アスベストは未だに終わらない問題であることが浮き彫りになっている。

■対策が遅れている民間施設

 武蔵野市も含めて、市役所や学校などの公共施設は自治体によってアスベスト対策はおこなれている。しかし、民間では費用面から遅れている実情がある。
 国土交通省の社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会が昨年の6月12日に開催され、「民間建築物における吹付けアスベスト等に関する調査」が資料として配布されている。ここには1956年(昭和31年)頃から1989年(平成元年)までに施工された民間建築物への吹付けアスベストなどを調査結果が記されているが、調査対象約27万4000棟のうち報告があったのが約22万9000棟。このうち、露出してアスベスト等が吹付けられている建築物は1万6000棟ほどがあったこと。そのうち対応済のものが約9500棟、対応率約60%とのデータ記されている。つまり、約6500棟、報告のあった約3%の建築物でアスベストへの対応がされていないことになる。
 ところが、この調査の詳細を見ると、回答があったうち半数以上は劣化の状況が把握されていない(飛散している可能性がある)ことや分析機関による分析が実施されていないなど、実際に安全なのかは不明確であることが分る。
 
 さらに、この調査の対象は床面積1000平米以上の大型の建築物であり、1000平米未満の中小の民間建築物などに対象を拡大するとアスベストがあるのではないかと推測される民間建築物は約280万棟と推計されていること。木造や戸建て住宅まで範囲を広げると約3300万棟ものぼると記されている。しかも、この調査は危険度の高いアスベストだけを対象としたものでしかない。

 2007年には総務省が1000平方メートル未満の民間施設から42カ所を選んでサンプル調査を実施したところ、7施設でアスベストが確認されたと公表した。この中にはアスベストが壁からはがれ、床に落ちていた旅館もあったこともあり、アスベストの実態把握を徹底するよう総務省が国土交通省など関係5省に改善勧告を出したほどで、民間にはまだまだ存在していることが分かる。

■想定外のアスベストも見つかっている

 アスベストのうち発がん性が指摘されているものは主に6種類がある。建築材料として使用されているのは、クロシドライト、アモサイト、クリソタイルの3種類とされてきた。ところが、2008年1月には、使用されていないとされてきたトレモライト、アクチノライト、アンソフィライトが保育園などで使用されていることが判明したことから、次々に新たなアスベストがある施設が見つかった。これは、2005年と2006年に各自治体が一斉調査を行ったが、自治体の75%が使用されていないとされていた3種類のアスベストを調査していなかったことが大きな原因だ。もしもを考え6種類を調査していれば、被害を少なくすることができたはずだ。治体の危機意識の課題が浮き彫りになったともいえる。
 現在では、この6種以外にも新たな危険性を持つアスベストが住宅用の屋根や壁剤、プラスティック製の床材などに使用されていることが指摘されているなど、いまだにどの建材にアスベストが入っているのか不明なことが多いのが現状だ。
 
 使用禁止で安全になったかと思えていたアスベストだが、新たな危険が明らかになったことから今後の早急な対応策が求められることは明らかだろう。

■解体工事が急増 工事で飛散した例は多い

 アスベスト対策部会の資料によれば、建築物の耐用年数から想定すると解体数は2010年から増え続け、2028年前後に2009年の倍となる解体数のピークが来ると推計している。ことを考えれば、今すぐに有効的な対応が必要だ(画像参照)。
 ところが、解体工事が確実に行われているかには疑問符がある。いくつか例をあげてみる。kaitai

・2006年に読売新聞がアスベスト除去工事について独自の調査を行ったところ、全国で63件の違法工事があり、このうち、40件が飛散防止をしていなかった悪質なものだったと報道している。

・兵庫県は、除去工事について調査を行っているが1997年から2004年での調査では、届出のあった工事現場の約20%の現場で漏えいがあり工事中止などの指導を行ったとしている。指導の成果といえるのかしれないが、2005年、2006年の調査では、4~10%と下がってはいますが、安心できる状況ではない。

・千代田区では全国初となる「アスベスト飛散防止指導要綱」を2007年に施行している。これは、アスベストがある建築物を解体するさいには、建設リサイクル法での届け出が必要となっていますが、2005年度に区内で解体された建物は269件のうち、築年数や建物の構造などから34件を「石綿使用の可能性大」と区はみていたものの、実際にはアスベストがあったとの申告はわずか6件とあまりに少なかったことが発端だ。

・新潟県佐渡市立両津小学校で2006年6月30日、吹き付けアスベストの除去工事中に養生のすき間からアスベストを含む粉じんが漏れる事故があった(ケンプラッツ)。

・1999年に文京区さしがや保育園で0歳児の定員増をはかるため園舎の改修工事を実施したところ、園舎の天井裏等に存在した吹付けアスベストを飛散させ、隣接する保育室の園児等がアスベストにばく露するという事態が生じた(文京区さしがや保育園アスベスト健康対策等について)。

大阪・御堂筋沿いの商業ビル工事、アスベスト大量飛散(朝日新聞 2006年12月21日)

無届けで石綿除去工事、容疑で都内の業者を書類送検(朝日新聞 2006年12月07日)

 他にも、飛散してしまった例もあり、すべての工事が安全に行われていない現実は明らかだろう。

■コストカットで飛散する

 建設業界は、元受がすべての工事をするのではなく、協力会社、下請けや孫受けなど多くの業者が行うことでなりたっている。昨今の不況もあり、元受以外の業者が、コストのかかるアスベスト除去工事をやらない、あるいは、安全対策を十分に行わずに実施することも十分考えられるはずだ。
 除去を行う業者の多くは零細企業が多く、専門業者はほとんどいないのも実情だ。同じようにマスクをするからとの理由で塗装業者が行う例もあるとの話も聞くほどだ。もともと二日間の研修で資格が取れるという制度上の課題もある。

 実際にある事業者から話を伺うと、天井裏やエレベーターシャフト、壁面パネルの裏側と躯体との接合部などの吹き付けアスベストは、通常の工法では飛散を防ぐことは難しい。天井裏など目に見えないアスベストはそのままで解体してしまう。薬剤を使い固定化する技術はあるが、コスト削減で施行されないことも多いと話されてた。

 さらに、アスベストがないと申告しておいて解体してしまう。申告があっても、自治体が現地調査を実施しなければ、対応をしたとすればいいという抜け道もある。過去にアスベストを除去したビルはアスベストがないことになるが、躯体と壁の隙間など除去できない場所があり、このようなケースでは飛散対策をしないで解体してしまう。あるいは、アスベストがないものと思い込んで解体してしまった場合には、飛散を防ぎようがない現実もあるのだ。解体現場を検証するにしても、専門の検査機関もなく、第三者機関もない問題もある。

■法律は未整備

 現在、アスベストがある建築物の解体について規制している法律として、大気汚染防止法がある。この法律によって、自治体への届け出とともに、
・内部をシートで密閉する
・機械で内部気圧を下げる
・薬液を吹きつけ固定化することで飛散防止措置を義務付けている。

 ところが、大気中のアスベスト濃度を規制する環境基準がない。
 また、同法でアスベスト濃度を計測すると規定しているのは、アスベスト製品を扱う工場周辺の基準だけだ。飛散監視測定の義務もないため、解体工事でアスベストが屋外に飛散しても、それだけで法律違反には問えない。

 ほかに2005年に厚生労働省が石綿障害予防規則を制定しアスベストを使用した建築物の解体時の規制をしているが、あくまでも現場の労働環境の作業手順を示したもので周辺の飛散を防止することは触れられていない。「いながら除去」という店舗などで工事関係者以外が利用しながらアスベストの工事を行う場合があるが、このような状況で飛散してしまう危険性があることになる。
 しかも、アスベストの調査は、資格があるものが行うことが望ましいとあるだけで、誰がやっても良いことになっている。建築基準法にも規定はあるが、濃度の測定方法が規定されていないのだ。

■静かなる時限爆弾

 アスベストの健康リスクだが、飛散したアスベストを吸引したとしてもすぐに発症するのではない。個人差があるが。アスベストを吸い込んだ後、30~50年もたってから発症することや発症後も確立した治療法がないことから「静かな時限爆弾」とも呼ばれているのがアスベストなのだ。
 
 武蔵野市のサイトには『現在、アスベストを含有する吹付け材が使用された建築物等が建て替えの時期を迎えており、建築物等の解体や改修に伴うアスベストの環境への飛散防止対策の徹底が必要となっています』とあり『延べ面積が2,000㎡未満の建築物は、市の環境政策課へ届出が必要』と記されている。
 アスベストへの高い認識を示していることは評価できるが、実際の工事現場のどのように把握できるのだろうかと疑問は残る。

 健康被害がおきてからでは遅い。

 特に人の通行の多い駅周辺でのアスベストのある建築物の解体には、市も監督と調査をより強めるべきだ。

■京王吉祥寺駅の解体 アスベストは大丈夫か

 特に近く解体工事が行われる京王線吉祥寺駅ビルの解体工事には十二分な対応が必要だ。多くの人が利用する駅でビルの解体工事が行われる。しかも、年代から考えればアスベストが使われているは当然のことだからだ。

 たとえば、駅のホームの天井裏にアスベストがあるとすれば、どのように工事を行うのだろうか。アスベストを除去するには、密閉して外に出ないようにする必要がある。電車がとおり、多くの人が通行しているその真上で密閉してアスベストを飛散させないように解体工事をするのは至難の業だろう。もしも飛散してしまったら、と不安にならないだろうか。

 これもある事業者に聞いた話だが、アスベストがあるビルの解体工事で外からは密閉しているように見えるが天井部分は開けられたままの場合もあるのだという。自治体の検査が外から見ているだけの場合には見過ごしてしまうことになる。施主が対策を指示したとしても、下請けや孫受けの事業者の知識不足で飛散してしまう可能性も否定できないだろう。
 
 これらの懸念から解体工事に先立ち、市としても十二分な対応を取るようにとの提案が今回の一般質問だった。
 市にはまだ届出はないが、アスベストがあるのであれば、解体前、解体期間中、解体後も市は行うとの答弁だった。京王吉祥寺駅ビルは述床面積が2000平米以上であるため、本来は東京都の管轄だが、市も検査を都や労働基準監督署と一緒に行いたいとしていた。期待をしたい。
 京王吉祥寺駅ビルは3月で閉店してから解体工事にはいる。解体工事の工法など詳細は明らかになっていないのが現状だが、今後も十分、注意を続けたい。