調布の複合施設図書館「たづくり」から学ぶこと

 市民会館文化祭で開催されていた「市民の学習と図書館」~市民会館とプレイスのこれから~(主催・ジモッピーN)に参加してきた。講師は、元調布市立図書館長の座間直壯さん。現在、建設が続いている武蔵野プレイスと同様に図書館を中心とした調布市立の複合施設「たづくり」についての話を伺った。
「たづくり」は、指定管理者制度で市の財団法人が運営する計画があったが、図書館は直営のままにしたのだそうだ。

「たづくり」は、『学習活動の場づくり、文化活動の場づくりなど7つの場づくりを基本理念とし、さまざまな機能を一つに束ねた、文化の香り高い複合施設です。館内には喫茶・レストラン、中央図書館、コミュニティFM放送局もあります』(公式サイトより)という複合施設だ。貸しホール、会議室、学習室、ギャラリーなどがあり、武蔵野プレイスと似た機能を持っている。

 調布市では当初、「たづくり」を市が出資している調布市文化・コミュニティ振興財団人を指定管理者として図書館を委託する考えだったのだそうだ。
 指定管理者制度にする理由は、複合施設であり、さまざまな機能があるため、統合組織としてひとつの財団に委託したほうが良いとの考えから。

 しかし、図書館を担える技量が新組織にあるのかとの問題。国が昭和61年の予算委員会で、当時の海部文部大臣が図書館の根幹業務は委託になじまないと答弁していたことなどから、市民や図書館関係者、著名人などの反対運動が起きたこと。また、当時、管理側にた座間さんなどが図書館については委託はさせないと主張したことなどもあり、委託はなじまないだろうと最終的に市長が委託を断念したのだそうだ。

 ただし、すべてではなく、閲覧室と自習室は図書館から独立していたこと。他のホールなどは財団に管理運営を委託している。これは、すべてを直営にはできないこと。条例上は委託との文字を残したいとの市側の主張との折り合いの結果であったようだ。
 

 ■図書館とは

 座間氏は、図書館について、学校に教師が必要と同じで図書館に必用なのが司書。しかし、行政のなかでおざなりになってきている。本を貸すだけ、勉強するところ程度でよければ誰でもいいと考えてしまいがちで、そのために、関係ない部署から職員を移動させていることが多い。調布市では、人事の停滞を防ぐ意味での移動はあるが、本庁に移動しても三年で戻ってくることがほとんど。そして、図書館の専門職として採用されているとしていた。

 司書は何をするか。究極は市民の知る自由を守ることだ。市民が知りたいことをきちんと資料をそろえておくこと。資料がなければ他から入手したりコピーなどで用意しておくことが求められる。図書館にどのような資料があるかで、図書館の質は分る。そして、誰でもできるような図書館ではいけないと市民からも声を上げるべき、主張すべきと話されていた。

 ■図書館を応援する市民

 調布市の市民が図書館の委託をなぜ反対したのか。これは、どのようなサービスができているか。資料を満足しているかなどについて、利用者懇談会をしていることが大きな力になっていると座間さんの話を伺っていて思えたことだ。

 座間さんは、利用者懇談会を実施するさい、図書館ならカウンター越しでの対応なのでよいが、平場での対応には何を言われるか分らないので勇気が必要だった。だが、やってみるとそれほど攻撃的な意見はなく、市民と一緒に考えていくことが重要だと分ったとも話されていた。

 そして、図書館は、利用意欲を向上させる情報を発信しているか。利用者が何を求めているか分っているか。需要が供給を呼ぶのではなく、図書館は需要を生むような努力をしなくてはならない。サービスニーズに応える必用がある。そうすれば、市民も応えてくれるとも話されていた。同時に、市民も図書館は本来こうあるべきと自身で判断すべきとの話も興味深かった。 

 ■武蔵野プレイス

 武蔵野市で計画が進んでいる武蔵野プレイスについては、計画書などを読んだだけの判断でしかないがとの前提でいくつか気にかかる点について話しをされていた。
 
 まず、武蔵野プレイスは図書館の分館の位置づけだが、中央館と二重構造にならないだろうかとの疑問を出されていた。そして、施設内には他のさまざまな事業があるが、図書館員が担うとなれば難しい。図書館は図書館としてひとつの完成した組織にするべきだ。それは、役所が作る複合施設は、縦割りじゃないというが、結局は縦割りになってしまうからだとされていた。

 また、管理運営の責任者は誰なのか明確にするべき。武蔵野市の全体の図書館サービスレベルとプレイスのレベルが同じでなくてはならないのに、図書館サービス、選書の責任は中央館なのか、プレイスにあるのか分らない。運営指針をみていると、個別機能と複合機能が整理されていないようにも思える。
 利用者の参画が計画されているが、誰がどのように調整するのか。「たづくり」でも同じだったが、最初は連絡会をやるとしていたものの、利用者の共通の話題がなくなってしまう。施設の維持管理だけしか共通のものはなく、複合施設でどのようにサービスを提供するかの議論がなかなかできない。結局は、縦割り行政を引きずっている、とされていた。

 さらに、コーディネートできる人間がいないと始まらない。あらゆる分野に技量と造詣を持っている人が必要になる。横断的に事業を行いたい理念は分るができないのが実際だ。
 それならば、複合化にこだわらないほうがいい。それぞれに専門家を配置してそれぞれがきちんとやる。それをトータルで管轄できる人を配置するほうがいい。市民活動の支援を図書館員がすべてやるのであれば、可能性はあるが、無理だろう。現実に直面したきた身としては思う、と話されていた。
 

 ■指定管理者を導入しなかったのは 

 座間の話は図書館の本来の機能、市民とともにあるべきことなど多方面にわたり、それぞれ興味深いものだったが、複合施設である「たづくり」が指定管理者制度を検討しながらも採用しなかったことについての話が最も興味深かった。なによりも、武蔵野プレイスの未来を予見していないかと思えて仕方がなかったからだ。
 そして、「たづくり」が将来にわたって指定管理者制度を導入しないとはいえない。可能性はあるだろう。ただ、導入するのを止めたのは、その時点でリスクが大きいと判断したから、と話されていたこともよく考えるべきだろう。今からでも、プレイスで予見できることは防ぐことはできるはずだ。