公立保育園 運営主体変更の話の整理

 第三次子どもプランに書かれた公立保育園の運営主体変更について波紋が広がっている。いろいろと問い合わせをいただいているが、どうも言葉の意味が伝わっていないことが分かった。「民営化」とは何のことなのか。そもそも、何が問題になっているか、少し整理をしてみたいと思う。

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 今回の件では、以前にも書いたが読み込まないと分からない。そもそも、文章が長いとの指摘も受けている。また、行政という“業界”に浸かっていると、普通に使う言葉でも違う意味に思ってしまうのだなと反省をして、聞かれた質問内容についての返答した内容ををなるべく簡単に整理をしてみたい。

■財団法人と株式会社とは違う

 ある人と話をしているときに気がついたのだが、今回市が提案している財団法人も株式会社と同じように思っていることが分かった。また、委託という言葉があると、営利企業へ委託、コスト競争になり、保育士が定着せず質が悪くなると思い込んでいるようにも思えた。

 財団法人は、一般的な会社とは違い非営利組織のこと(※1)。武蔵野市では、福祉公社、スポーツ振興事業団、開発公社などがあり、市が100%出資、事業費も補助し市の職員が出向している。財団法人に直接雇用された職員が市の職員(公務員)ではないことは違うが実質的には市の事業を行っているのと変わりがない。保育園も同じだと思えば分かりやすいのではと思った。
 ただし、市が出資することで安定し“公務員”体質になるデメリットもある。また、費用だけを考えれば、株式会社も含めて入札で委託を決めたほうがはるかに経費削減にはなるので、問題がないとはいえない。

 このことよりも、財団法人には評議員会を設置することになる。評議員会は、理事の選任や事業内容を決めることができるので、保護者や学識経験者を評議員にすることで、保護者も保育内容について意見を言うことや関われることも考えたほうがいいと思う。
 現在の市の財団に評議会はあるにはあるのだが、市の職員が多く実質的には機能していないように思えるので、協働を目指す市政ではあればこの“改革”も必要だろう。

■保育士の入れ替わりるのか
 
 委託すると今の保育士は解雇され、新規雇用された経験の少ない保育士に入れ替わってしまうと思っていることも分かった。
 市が出資した財団法人であれば、今の公立保育士を出向させることができるので、園長も含め、今の保育士がそのまま保育に当たることができる。これが、民間企業であれば別会社となるので出向はできず、入れ替わってしまうことになる。これを回避できるのも財団のメリット。
 そもそも、いったん雇用した保育士を解雇することは、よほどのことがないとできない。市の直営か財団かは別として、定年まで今の公立保育士には勤めることができる。
 
 また、財団が設立された場合、財団で採用した保育士がだんだんと増え、一方で公立の保育士が定年で退職していくので長い年月をかけて入れ替わることにはなる。これは、市の保育士の全体の給与を下げることになるが、保育園が増えれば経費は増えるので全体の費用は分からない。

 もっとも9園ある公立のうち、いくつを財団で運営するか。今後、市職員としての保育士を何人にするのかは未定だ。先の決算特別委員会で質問をしたが、市職員の定数適正化計画で決まっていくことになり、現時点では市職員としての保育士は何人になるかは分からない。

■公立保育士の給料は下がるのか

 財団法人ができ公立保育士が出向すると給料が下がるように思われているが、他の財団も同じで身分は財団法人職員となっても給料はそのままだ。つまり、今の保育士は給料はそのままで仕事を続けることができる(他の職員と同じで人事院勧告、労使交渉などでの引き下げはある)。
 
■委託先が不安定でつぶれてしまう
 
 株式会社やNPOでは、国の補助金が削減されることや他の事業での失敗などで会社が倒産する可能性はある。しかし、市が出資し市が運営費を出している財団法人であれば、市が、はたんしたり市が運営費を出さない(※2)となれば別だが、運営は民間企業よりもはるかに安定している。
 委託という言葉から民間企業への委託に思えてしまうようだが違う話だ。

■公立が委託されると保育園の質が下がる

 武蔵野市の保育園の質をリードしてきたのは確かに公立保育園だ。しかし、過去形かもしれない。
 たとえば、障がい児は民間は1歳から受け入れているが、公立は2歳児から。産休明け保育を行っているのは公立9園のうち、境、境南、吉祥寺の3園。民間は4園のうち3園が実施している。19時15分以降の延長保育は、西久保、ありんこと民間のみだ。お泊り保育を実施しているのも民間のみ。施設建て替えがあったとはいえ、定員を増やしているのも民間。そもそも、公立保育園改革は、民間のほうが満足率が高いことから始まっている。

 議会で公立保育園の役割は何かと質問したことがあるが、明確な答弁はなかった。私は公立園は必要であるし、障がい児保育や地域の子育て支援センター的な機能は、公立だからこそできるとは思っているが、今の公立保育園はどうなっているの、と思ってしまう。公立と民間では、保育士の給与以外に何が違うのかも考えてみるべきだろう。
 

■考えるべきことは待機児

 公立保育園の委託がいいと悪いという前に、今の待機児をどうすればいいかを認可保育園の保護者も考える必要があると思う。
 待機児は保育にかけるとして、本来であれば認可保育園に入れる子どもたちだ。現在では、認可に入れず認証保育所に入所している子どもは待機児にカウントしていないが(新基準)、認可への入園希望を持っている子どもや家庭は、待機児数よりも、もっと多いからだ。待機児とその家庭のために何ができるかも考えるべきだろう。入ってしまえはそれで安心ではないはずだ。

 9月議会の一般質問で最新の待機児数を質問したところ、8月1日現在で92名。旧基準(認証に入所していて認可を申し込んでいる人数)215名との答弁があった。12月1日から精華第第二保育園が開園し少なくなっているとは思うが、まだまだ多い(※3)。
 今の認可保育園に入園している人にも、以前は認証や認可外保育所に通っていたことが多いと思う。そのときのことを思い出すべきだと思う。

■要求、要望だけでいいの

 保育園は必要、だから、財源カットは一切ダメ、でいいのだろうか。普通であれば、待機児対策、財政のために株式会社など営利企業に委託するのが普通の自治体だ。今回の武蔵野市の提案は、他の民間委託の問題を考えていることも理解すべきだと思う。
 さらに、保育の質から公立保育園で広まる非正規職員の問題(官製ワーキングプア)にも踏み込んでいることは他にはないことだ。

 もちろん、増やさなくてはならない保育園、保育士、さらに公立で広がる非正規職員をすべて市職員(公務員)にするという選択肢もある。それを選ぶべきかが問われていると思う。

 先の20年度決算特別委員会で最も印象に残っているのは、敬老事業についての議論だ。

 それは、「毎年、75歳以上の高齢者が500人増えている」というものだ。

 武蔵野市の認可保育園に在籍している子どもは1354人(12月1日現在)。三年もたたず、保育園の子どもの数を追い越していく増加数なのだ。
 保育園に限らず幼稚園や学校など今以上に子ども予算をかけるべきだと思っている。しかし、この数字を見ると単純につぎ込めとはいえなくなってしまう。自らの利益を守る、もっと欲しいとの要求、要望だけでいいのかも考える時期ではないかと思う。

 簡単にと思ったが、長文ですね。失礼…

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※1 
お金を集めて金利で事業を行ったり、資産家が亡くなりその遺産を元に事業を行うことが分かりやすいが、資本金が300万円以上あれば設立可能なので、非営利事業を行う場合によく使われている。
 天下りの受け皿、財団法人から政治家へ寄付が行われていた(税金から寄付になってしまう)、税金逃れに使われるなどがあり、公益法人改革が行われた。今では公益性の高いために税金が安い公益財団法人と公益性は問われない(特定のグループを対象でもいい)一般財団の二つに大きく分けられている。

※2 
 市が出資するかしないか。額も含めて議会が最終的に決める。つまり市民が選んだ議員が決定することになり、本来は民意を反映できる。

※3 
12月1日現在で市の認可保育園への申込数は、1302名。これには、自宅から遠いなどでの転園規模数の含むので待機児数ではない。

【参考】認可保育園入所状況

写真は、平成21年12月1日に31年ぶりに新設された民間認可保育園、精華第二保育園。写真下はその内部(開設式にて)。
 この保育園の土地は武蔵野市の土地。来年には、三鷹の100mツインタワーに認証保育所が開設予定だ。