上海環球金融中心視察(2)

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 SWFC(上海環球金融中心、上海ワールドフィナンシャルセンター)を訪れてみると、まず、驚かされてしまうのは、その高さ。おのぼりさんなので六本木ヒルズでも思わず見上げてしまうが、その倍の高さ、492mという世界で最も高い(※)の建物だからだ。
 しかし、感心したのは物理的な高さではなく理想の高さだった。



 SWFCのある浦東地区は、元々は下水もなく共同炊事場で煮炊きをしていたような住宅地だったのだそうだ。黄浦江という大きな川を挟んだ対岸の浦西地区が市街地の中心であり、この地区には行ったこともない人が多かったほどだったのだそうだ。
 そこから一年で3500世帯の住民が転居してしまうような「上海スピード」で開発が動きだし、超高層ビル群だけではなく道路などのインフラ、公園の整備などが一気にできあがった地区だ。いわば、新都心となる地区だろう。
 このような地区への進出は、無謀、早すぎる、大きすぎるとの批判は数多くあったが、グランドデザインさえない東京とは異なり、まちを新たに計画的に作れることに何よりも魅力があったからと今年の三月に森ビル社長の森稔氏と懇談したさいに伺っていたが、現地で見上げてみると、周辺の昔の姿は分からないものの、カントリーリスクも十分考えられるのによくこれだけの建造物を作り上げたものだとの驚きを覚えてしまった。

 現地法人の方々にも、通常は入れないような内部も入らせていただき詳しく説明を伺せていただいた。SWFCの詳細は公式サイトにあるのでご参照いただきたいが、簡単には完成にはたどり着かなかったとの話を伺った。

 例えば、SWFCは1997年に着工したが、その後にはアジア通貨危機での工事中断や9.11やサーズなどでの逆風があったこと。当初デザインではビルの頂上部に月をイメージした円形の吹き抜けがあったが、日の丸をイメージさせるとのメディアの批判があり、反日感情を刺激しないように展望デッキをいれた現状のデザインに変更したことなどだ。

 しかし、工事が中断している間にも、飛行機がぶつかっても大丈夫なほどに設計を変更していたことやデザインも変更していたのだそうだ。
 デザイン変更について、完成時の記者会見で聞かれた森社長は、『昔の貨幣はコインだったが今はカード社会。こちらのほうが現代の金融センターらしいと思いませんか』とコメントしたのだそうだ。完成したから簡単に言えることかもしれないが、工事が中止している最中のスタッフや心情を考えると、常にポジティブに発想し行動ていくその考え方にも驚かされてしまった。shanghai202

 森ビルの現地法人の方々にも再開発やまちづくりへの思いなどを伺った。そこでも共通しているのが「Vertical Garden City」(垂直の庭園都市)との理念だ。

 大都市では、住居と仕事場との往復に時間がかかってしまう。それならば、住居と仕事場が同居した超高層ビルを作り、ビル内で通勤をするようにすれば、無駄な時間が少なくなる。また、高層化で作り出した空間に緑を増やすことが可能であり、さらに、農地にもすれば、地産地消にもつながる。地方の環境をより良く保つこともできるだろうとの発想だ。便利にして時間をかけずに目的が達成できるまちにすることは、コンパクトシティとの考え方でもあるわけだ。

 もちろん、超高層化はどこのまちにでも可能ではないし、武蔵野市でできるかといえば課題は多いと思う。しかし、現状を打ち破るには既存の概念を打ち破ることから考えてみるべきではないか。財政には、選択と集中とが必要だが、まちづくりにも同じかもしれないとも思えた。

 また、六本木ヒルズやアークヒルズなど高級、あるいはハイレベルと思えるまちづくりばかりを続けていると森ビルへの指摘があるが、それは、ハイソな人を対象にした事業だからというのではなく、高級なものは時間がたては、いずれ普通になっていく。だから、最初から高い理想を掲げハイレベルなまちを作ることが、結果的に良いまちづくりになっていくとの話も伺った。

 SWFCを訪れて思ったのは、物理的な高さへの驚きは別として、周辺環境だけではなくビルをまちとして捕らえる必要性だ。そして、超高層ビルへの賛否は別としても、理想のまちを常に考え情熱を持って進めようとの熱い思い、高い理念の重要性だ。

 SWFCについて北川正恭団長と話しているさい、政治や行政の話にもなったのだが、費用対効果は重要だが、問題はその次。何を目指すかだ。混迷する時代には大政治が最も必要、理念なき政治は混迷をもたらす、となった。
 まちづくりも政治も大きな理念を持つこと。ここが何よりも重要ということが上海での結論だ。

 
 説明を受けた後、現地法人の方々と懇談しているさい、地方議員に望むことはとの話題になった。世界を見て欲しい。見ることで発想になっていく。見てもいないことができるのだろうか。といわれてしまった。
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 上海と武蔵野市は競い合う土俵は違う。同じことはできないが武蔵野市の目指す理念とは、まちづくりとは何か。都市マスタープランや自治基本条例が今後検討されることを考えれば、大きなテーマであり、考えなくてはならないと痛感した。日本に戻っても答えはでていないが、SWFC視察が大きな刺激にはなったのは確かだ。

※ 世界高層ビル協会が認定する2008年度の「最高フロア高さ」「軒高」の2部門で世界第1位。アンテナの高さまでにすると世界一は別。ドバイでは1400m(凍結中)、サウジアラビアでは1600mのビルが計画されている。

写真上から
・見上げるだけで首が痛くなった
・Vertical Garden Cityの概念図。風の流れを作ることや空地に緑を、と書かれている
・世界一の高さにある展望台。足元も透けて見える。