公設保育園は民営化!?  “新武蔵野方式”示される

11月4日の市議会文教委員会で第三次子どもプラン武蔵野中間報告案の行政報告があり、公立保育園の“民営化”の方針が示された。多くの自治体でコスト削減で公立保育園の民営化が行われているが、今回の案では他の自治体とは異なり、新たな武蔵野方式の保育園を示していた。保育園の民営化には数多くの問題があるが、この案ではこれらの問題への対応作も示されている。


 第三次子どもプラン武蔵野は、国が次世代育成支援対策推進法で自治体に策定を求めている地域行動計画の後期計画(全体計画は10年計画)と第四期長期計画・調整計画(平成20~24年)の子ども分野のアクションプラン(実施計画)のふたつの性格を持つ計画だ。
 この案には、多くの計画が記されているが、最も注目されるのが保育園の運営形態の見直しだろう。施設は市が建て公務員保育士が保育にあたるという公設公営ではなく、新たな運営形態(組織)で保育園を運営したいとの考え方だ。公設公営の保育園から代えていくことを考えれば民営化とも言える内容だ。

 現行の公設公営保育園と新たな運営形態の保育園については、第三次子どもプランの重点的な取り組みの2に下記のように記載されている。

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■公立保育園をめぐる現状と課題
・これまで武蔵野市の公立保育園は、多様化する保育ニーズに対し先駆的な取組を行ってきました。また、公立保育園が一定で均一な保育を提供することにより、武蔵野市の認可保育園の保育水準の基準となってきました。

・しかし、公立保育園は、非常勤職員の雇用止めの問題や非正規職員の増加に伴う課題、保育士資格を持った非常勤職員の確保などの問題を抱えています。

・また、公立と民間では児童1人あたりにかかるコストに依然大きな差があります。この公民格差の解消は大きな課題です。

■公立保育園の運営形態の見直し
市としては、前述のとおり、認可保育園全体の質を維持向上させていく必要があります。また、待機児童対策などの緊急の課題もあります。今後の子ども関係施策にかかる費用等を考慮して、現段階で計画性を持って公立保育園の運営形態の見直し(運営主体の変更)を行うべきと考えます。

公立保育園の運営形態の見直しを行う際の基本的な考え方

 1.市の責務として、市内の認可保育園全体の保育の質の維持向上を目指す
 2.保育士の安定雇用の保障と信頼される保育士の人材育成・確保に努める
 3.運営主体の変更により財源を生み出し、入所定員の拡大や新規施策等の子ども関係予算に充当する

・一般的に公立保育園の民営化は、保育の継続性、保育の質の低下、保育士の入れ替わりが最大の問題と言われています。武蔵野市における公立保育園の運営主体の変更については、保育の質を維持し、子どもと保護者に不安を与えない手法について検討を行います。

・具体的には、以下の3点を条件とします
 (1)保育士の大幅な入れ替えがなく、保育内容、保育体制を継続できること
 (2)経験豊かな保育士がバランスよく配置されていること
 (3)市の関与が行えること

・一般公募により運営主体を選考した場合、一般の法人等で上記条件を満たすことは極めて困難と思われます。
・認可保育園の本来の役割に公民の差はないと考えています。ただし、これまで公立保育園が担ってきた役割、今後の保育制度の動向に留意しながら、運営主体を変更する保育園の数、具体的なスケジュール等の詳細についての検討を進めます。
・また、個々の公立保育園の運営主体の変更の検討を行う際には、これまでどおり当該保育園関係者と十分な調整、意見交換を行います。

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 文教委員会では、下記の点も明らかになった。

・今後の市の財政を考えると、いつまでも財政は豊かではなく厳しくなる。
・コスト優先で市場原理に任せる株式会社などへの民間委託にはしない。
・公立園で問題になっているのは、非正規職員(嘱託やアルバイト)が増えていること。保育の質にはさまざまな要素があるが、保育士が継続的に雇用できないことで質の低下がある。現状のままの公立園では質を保つのは難しい。
・公設公営保育でなければできないことは、かつてはあったが、現状では見いだせない。

 文教委員会では委員から質問が多くあったが、共産党の委員からは、公設公営が望ましいとの意見が示されてはいたものの今回の案を否定するような意見はなかったと思えた。

 この中間報告案や文教委員会での質問を私なりの解釈も加えてみると下記になると思う。

○公設公営を維持するために非正規保育士を増やすことでコストを抑えてきた武蔵野方式は限界にきている。
○今後、市の財政は、少子高齢化が進むことで高齢者福祉などの費用は必然的に増える一方、税金の担い手である人口が減り、財政は厳しくなる。景気が急激に向上することは見込まれない。
○市民からの公務員保育士を増やすことへの理解は得にくい。
○市が関与する組織(新たな運営形態)を設立し、ここへ委託し非正規ではなく正規保育士を雇用し継続的に働けるように考えている(給料はいくらになるかは不明)
○待機児をゼロにすることを目標とすることや子育て支援を拡充するには財源が必要であり、公設公営保育園の人件費(※)を減らすことでその一部にする。

●新たな“公設公営”の“新武蔵野方式”

 新たな運営形態の具体的な内容は明らかにはなってはいないが、市が関与することを考えれば財団法人や社会福祉法人などの新たな組織に市が運営費も含めて出資していくことになるはずだ。保育士の身分は公務員ではないが、市が設立した保育園であり市が経費も含めて運営に関与することを考えれば、新たな“公設公営”ということになる。

 委員会で指摘したことだが、公営ではなく、民間委託でもない中間策を保育園で行おうとしているのが、今回の案だろう。
 他の自治体では、民間企業に委託することを選択せず、公的な意義のある社会福祉法人に委託する例はあるが、新たな運営形態を新設することや官製ワーキングプアへの対応策、保育の質についての考え方も示したのが今回の案であり、非常に画期的なことだと私は思う。
 

●分かりやすく伝えることと熱意

 これから説明会やパブコメを実施することを考えると、現状の様々な問題を解決するために、新たなことを武蔵野市がやろうとしていることをもっと分かりやすく説明すべきだ。そして、これを今やるべきであり、それは、こどものためでもあり市民のため、将来の武蔵野市のためにやるという熱意を示すべきだ。

 民営化という言葉が一人歩きすると、民営化反対というステレオタイプの運動へとなる危険性もあると思う。大切なことは、市財政の持続可能性も考えてこどもを環境をより良くすることを考えた結果であり、最もベターな選択であると市民に納得してもらうべきだからだ。

 国の政権が代わり保育の基準の見なおしが行われているが、市民に最も身近な自治体として、最善は何か。武蔵野市としてこのようなことをしているのだから、国も見習え、ともアピールすべきだとも思う。

 
●こどもが第一

 地域行動計画を策定するさい、国は今年の3月23日に行動計画策定指針を示している。
 ここには、少子化対策であること。策定に当たっての基本的な視点として子どもの視点が重要であり、児童の権利に関する条約の締約国としても、『子どもにかかわる種々の権利が擁護されるように施策を推進することが要請されている。このような中で、子育て支援サービス等により影響を受けるのは多くは子ども自身であることから、次世代育成支援対策の推進においては、子どもの幸せを第一に考え、子どもの利益が最大限に尊重されるよう配慮することが必要であり、特に、子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取組が重要である』との記載があり次代の親づくりという視点も必要だとしている。

 国の指針どおりにすべてをやるべきとは思わないが、この基本的な理念や方向性を示さないと、たんに事業を並べてただけとなってしまうこと。また、新たな運営形態での保育園がたんなるコストカットであり、営利企業への民間委託では問題になるから面倒なので避けようという考えになってしまう危険性もある。
 理念は何にしろ必要であり、どのような姿になるべきかの目標を明確にすべきなのだ。

 委員会で何ために計画を実施し、どのような姿を目指しているのかを示すべきとの提案もした。市長は答弁で対応したいとしていた。期待をしたい。

●課題と評価は

 懸念することは、新たな運営形態に市が関与することで、運営の柔軟さが損なわれることや運営が安定することで、保育士がことなかれの保育にしてしまうこと。向上心がなくなることがあると思う。このことへの対応策も考える必要がある。
 保育園とは保護者のコミュニティまでも含めた子育て環境全体を良くすることも仕事の一部であると私は思っているが、このことが理解されているかの疑問も残る。

 また、現状の民間認可保育園保育士との給与の差はどうなるか。認証や認可外保育所の運営や保育士とはどうなるか。さらには、乳幼児全体を考えれば私立幼稚園の運営を市としてどのように考えるかの課題も残されている。

 本来は、民間であろうと公であろうと、同一労働同一賃金であるべきだと思う。これらは、本来、国としてのビジョンを明確にすることだと思うが、待機児対策は急務であり国を待っている時間はない。
 保育園の運営には、保護者と保育士の労働問題とこどもの環境、市財政の持続可能性。待機児対策。社会変化。それぞれが複雑に関係しているため、それぞれを分析し妥協点を見いだす必要性がある。その意味も含め、現状課題を少しでも良くしようと自治体として考えたのがこの結果と考えれば、今回の案は評価できると私は思っている。
 
 

※市の職員の平均給与
1人当たり年額で739万4000円(給料+職員手当+期末・勤勉手当。退職金の積立にあたる額は含まない。市報むさしの平成20年12月15号より)。
給与は、高額であっても相当する仕事をしていれば納得を得られると思うが、市民に理解され共感されているだろうか。この課題もあるだろう。