農作業ではなく“農業”

gennki 武蔵野市農業委員会で愛知県大府市の(株)げんきの郷を視察した。げんきの郷は、道の駅などでよく見かけるような農産品の直売所で日帰り温泉なども併設する大型施設といえばイメージが伝わりやすいと思う。しかし、話を伺ってみると地域の生産者(農家)の生産性をあげ収入を増やし後継者が戻ってくるという成果を生み出していた。その大きな理由は、会社方式にしたことだという。



 
 げんきの郷の特徴は施設だけではなく、生産者が農作業ではなく“農業”をしていること、と担当の方に説明を受けた。“農業”とは何か。それは、生産者が商売として利益を生み出していることだからだという。

 例えば、ファーマーズマーケットには生産者が直接農産品を並べ、売れ残りは閉店時に生産者が引き取らなくてはならない。これは、どこの直売所でよくあることだが、農産品の値段の付け方やいつ出荷するか、出荷する量、などは生産者が自ら考えるようにしているのだそうだ。

 直売所で販売する農産品の値段は、まわりが○円だから同じで○円と決めがちだが、生産にかかった費用や労力を計算して、いくらなら利益が出るのかを考えてもらう。さらに、天候や時間によって販売数が変化することから、何時、どの位の量を出荷するかは生産者が自ら考えるようにげんきの郷から提案し実行してもらっているのだそうだ(必要なデータはげんきの郷が提供する)。

 マーケットに出荷するタイミングは一日に三回ある。お客さんが多い時に他の生産者が出荷を抑えていれば、多く出荷すれば数を販売できるし価格を上げることができる。他の農産品より質がいいとか新鮮と考えれば値段も上げてもいい。横並びでどの生産者も同じようにするのではなく、生産者が自ら考えることで収益を上げるようにしたというわけだ。

 その結果、周辺の農家の収入は増え、後継者が戻ってくるようになった。げんきの郷自体の収益も設備への初期投資への返済を含めても単年度で黒字になっているのだそうだ。運営費用には、県を含め自治体からの補助金はいっさいなしでだ。
 
 このことについて、なぜ黒字なのかを質問したのだが、「民間会社なのだから当たり前でしょう」という当たり前だが、なかなか実現できていない答えが返ってきた。農業に限らないが、とかく補助金に頼ることを前提にする事業が多いが、この答えには正直なところ、驚きだった。

「黒字にならなければ私たちの給料はでない。だから、収益を得るためにいろいろなことをした」のだという。直売所だけではなく他の施設も併設することで集客を図っていること。車で来ることを想定したことから遠距離からわざわざ来るお客さんも多いという好条件もあるが、会社なのだから利益を出すために何をすべきかを生産者にも納得してもらい実行することでげんきの郷自体の利益になっているのだ。「収穫してそのまま販売するのでは、農作業と同じ」という言葉も印象的だ。

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 一日に三回は収穫をして出荷しなくてはならないことになり、生産者は忙しくなるので反発はないかと聞いてみたところ、販売できる量に合わせて商品を用意するのは民間会社ならやっていることでしょう、と言われてしまった。自動車メーカーには、ジャストインタイムという生産方式があるが、同じことだとも思った。

 利益を上げるという最も基本的なことを追求した結果で生産者の利益も上がっている。武蔵野市を含め、どの地域でも同じようにできるとは思わないが、基本は何かを常に考え、目的を達成するために徹底的に何をすべきか、やらなくてはならないかを追求する大切さをあらためで学んだ視察だった。

写真上 げんきの郷の全体風景。奥に日帰り入浴施設がある
写真下 ファーマーズマーケットの入り口。直売所としては大型。新鮮で美味しいことから、近郊のレストランのシェフが材料を仕入れに良く来ているという。ダイコンは一本170円というのがあった。通常は100程度と考えるとそれだけいいものか。売れ残っているのかは分からないが、値段の付け方に独自性があるのは確かだ 

○施設内容
・はなまる市(ファーマーズマーケット)
・さんハウス四季(グリーンセンター)
・げんき横丁(水産物直売・加工販売)
・だんらん亭(農村レストラン)
・できたて館(惣菜、パン、アイスクリーム、豆腐、漬物等の加工販売など)
・めぐみの湯(天然温泉施設)
・あすなろ舎(食と農の総合研修施設)

○会社概要
・設立 平成12年3月1日
・資本金 1億円(全額JAあいち知多出資)
・社員数 232名(うち正社員45名・20年4月現在)
・年間売上げ 38億円(うちファーマーズマーケット19億円)
・年間利用者数 210万人
・施設建設費 39億円(うち4億円が県補助。残りは全額、JAあいち知多が出資)