メニューのない焼鳥屋

 8月31日に開かれた図書館基本計画策定委員会を傍聴した。武蔵野プレイスが完成することで武蔵野市の図書館は大きく代わることになるはずだが、市全体の図書館がどのように代わるべきかの理念や戦略性がまだ決まっていない。このことを考えると、この委員会は重要なミッションを持つことになる。
 まだ、中間報告も出ていない段階なので、計画の方向性は見ていないが、この回では、図書館とは何かという根本的な課題も指摘されていた。それは、「メニューのない焼鳥屋」でいいのか、ということだ。



 委員会はでは、冒頭、他の自治体の図書館を視察したさいの感想などが話し合われていた。
 そのなかで興味深かったのは、最近の多くの図書館で導入され、注目されている自動書庫についてだった。

 自動書庫は、図書館に戻ってきた本を機械が分類し地下などの倉庫に人の手を使わずに収納してしまうもの。取り出すときもどの本が必要かを指定すれば、本が自動的に取り出せるというものだ。本にICチップを貼り付けておくことで選別ができ、人件費の削減や書庫を効率的に使えることで蔵書を増やせるなどのメリットがある。
 
 しかし、この回の委員会では、自動書庫は、サービスを良くするために導入するのだろうが、良くならないのではないか。レファレンスが良くなるのではない。メニューのない焼鳥屋と同じだ、との指摘があった。

 メニューのない焼鳥屋というのは、おもしろい表現だが、的を射ている言葉だと思った。

 その意味は、レバーでも皮でもねぎまも何でもいいが、注文をしたいものが決まっている場合は頼めるが、何を食べたいか分からない、あるいは、自分に何が必要か分からない場合には頼めないということだ。

 焼鳥屋ではなく図書館で考えると、必要な本が分かっていれば、機械で自動的に書庫から出すことができるが、このような本とか、このようなジャンル、あるいは、特定の目的から必要と思える本を探すとなるとできないことになってしまう。
 

 また、自動書庫は本の大きさで判断して箱に入れて収納してしまい、テーマごとに収納されているのでないので、パソコンなどで検索して本のタイトルが分かれば取り出すことができるが、だいたいこのあたりのジャンルにあるはずと、図書館の本棚をうろうろしながら探すようなことが難しくなることにもなるのだそうだ。

 検索してヒットすればいいが、ヒットしないと目的にあった本があるのかどうかも分からない。検索の技術が必要になることや検索にヒットするような本のタイトルの付け方も必要になり、実際にレファレンスで活用しにくいとの指摘だった。

 図書館の魅力には、本を貸し出すというだけでなく、ぶらぶらしながら(ブラウジング)本を探せることもある。あるいは、何気なく見つけた本で新たな情報が得られることもある。
 それが、どうなるか。自動書庫には便利な機能があるものの、本来の図書館とは何かが問われることになるとこの指摘からは思えた。

 注文すべき焼き鳥が分かっていれば食べることはできるが、漠然と思っているだけの人は、ずっと食べることができない。焼き鳥を焼く炭火の煙と隣の人の焼き鳥の臭いをかぐだけとなってしまうのかもしれない。隣と同じの、では図書館の意味がなくなるのだ。図書館が無料の貸本屋で良いのなら、まだしも、そもそも図書館はな何か。貸本屋で良いワケじゃないと考えれば、重要な指摘だろう。

 プレイスには、書庫がなく、自動書庫の導入をそもそも考えていないのだが、図書館とは何かを考える上で重要な指摘だと思う。
 ブラウジング機能を特徴としているのがプレイスだ。その配置をどうするか、今後の大きなテーマだとも思った。

【参考】
図書館基本計画策定委員会