危うさを感じた「すまいるスクール」

 品川区で実施されているすまいるスクールを視察した。学校を拠点にした子どもたちの放課後の居場所づくり事業で、正規職員と大学生や地域ボランティアなどと協力しながら、遊びや勉強、スポーツ、文化活動など行うというもの。群れて遊ぶことがなくなった現在の子どもたちにはいい環境に思えたが、子どもの数が多すぎでひとり一人に向き合えるのかの疑問は残った。
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 すまいるスクールは、学童保育と全児童対策事業を統合した事業の先駆的な存在だ。武蔵野市で言えば、学童クラブ(こどもクラブ)とあそべぇを統合したようなもの。武蔵野市でも統合の研究はすることになっており、議会にも統合したほうが良いとの意見もある。果たしてこのような道へ進むべきだろうか。

 すまいるスクールの対象は、小学校1年から6年生まで。学校内にある専用室や学校の校庭、体育館などの施設を使い子どもが自由に過ごす事業だ。費用は、登録時に1200円(主に保険料)が必要。教員免許のあるスタッフの元での勉強会や英会話、パソコンの教室、ダンス教室などもあり、こちらには月500円(週に一回)~800円(週に二回)の費用と教材費が別途必要となる。
 詳細は品川区のサイトをご参照のこと。

 すまいるスクールは、学校という安全な場所で、学年に関係なく人間関係が作れたり集団で遊べること。地域の大人と関われることなど昔の子どもが育っていたような環境を現在流にアレンジして実現したかのような事業だ。
 視察先の学校では、100人ほどのこどもがあちらこちらで声を上げながら遊び廻っており、とても楽しそうな環境に思えた。

 また、遊ぶだけではなく、勉強も見てくれるなど保護者には願ったりとも言えるのでないだろうか。少なくとも、家に帰ってゲーム漬けになることよりもはるかにいい環境には思えた。

 しかし、気になることもあった。それは、子どもひとり一人に向き合えることができるのだろうかとの点だ。

 ■学童と全児童の一体化事業 指導員はプールの監視員?

 すまいるスクールは、それまで品川区で行ってきた学童保育事業を解消し、全児童対策事業と統合したことから、“学童業界”では、とかく、やり玉にあがる事業でもある。
 実際に学童保育の指導員からすまいるスクールの指導員になった人からは、人数が多すぎで事故が起こらないように見ているのが精一杯。まるでプールの監視員みたいだ。家庭の代わりとなる学童保育の機能は果たせないとの話を聞いていたので、実際にはどうなのかとも思っていた。
 このことを担当課の方に伺うと、家庭に保護者がいないこども(学童保育の対象になるこども)のケアはできていると話されていたが、実際は視察程度では分からなかったのが正直なところだ。
 ひとり一人の気持ちや悩みに向き合えるのか、ケアができるのだろうか、との質問には、多くのスタッフがいることで対応できる。自立のためには、自分で解決することともされていた。
 確かに自分で解決することも必要だが、数は少ないかもしれないが、できないこども、思い悩むこどももいると思うと疑問が残る。

 ■質を担うのは非正規職員

 こどもへの事業の質を担保するのは人、スタッフであるとの考え方は担当課と意見を同じにできたが、これだけのこどもの人数と多くのスタッフをひとつの学校で一人の正規職員だけ担えるのだろうか、との疑問が残った。すまいるスクールは、多くのスタッフが関わっているが、正規職員(公務員)は一人だけ。あとは、嘱託や臨時(アルバイト)であり時給900円の非正規職員なのだ。

 視察先の指導員の方は大丈夫ですよ、と話されていたが、ここでは大丈夫でも他の場所ではどうなのか。ここは優秀な指導員が担っていたとしても、次の世代の指導員が育つのだろうかとの疑問がある。

 担当課の方は、児童館については正規職員が担っているので、次を担える人材は育てられるとされていたが、最近では職員を減らすことが求められているため、児童館の新規採用はしていないらしく、中期的にはどうなるのかは分からないようだった。
 同様のことは、多くの自治体で共通している課題だろう。公務員減らしの風潮にあって、中長期的な人材育成計画を持っているのか、多くの自治体で疑問があるからだ。

 また、非正規職員は、例え優秀でも長く勤めることはできない問題もある。これは、自治体の非正規職員は臨時的な仕事について採用するので、最長5年間のという期間限定が原則だからだ。何よりも、時給900円では生活ができないだろう。正規になるには公務員試験を受けなければならないが、公務員試験を受かったとしても、現業職ではなく事務職での採用になるのがほとんどの自治体だ。つまり、ここのスタッフが、すまいるスクールの正規職員になれる可能性は、ほとんどないということになる。

sinagawa02 ■おおかたは良い事業 でも、危うさを感じる

 こどもが楽しそうに遊んでいる姿を見ると、おおかたはうまくいっている事業だと思った。しかし、危うさも感じた。このことは、ホールでたくさんこどもが走り回り嬌声をあげ、奥では勉強もしているこどもいる同じ空間に、体調の悪そうな一人のこどもが畳を模したマットに寝ころんでいたからだ。スタッフの一人が団扇で風を送り、体調を気遣っていたが、この環境でいいのだろうかと思ったからだ(このこどもは、保健室はイヤでみんなところにいたいとの思いからこの場所にいたのだそうだが…)。

 ■多くのこどもに、とは一人のこどもへの予算削減では

 多くの自治体では、こども一人当たりの費用がかかりすぎるから学童保育事業を廃止して、すべてのこどもが対象になる全児童対策事業にとしている。その考え方は、税の公平性から言えばいっけん正しいのかもしれない。
 しかし、こどもひとり一人に対応することはできず、結局のところ、浅く広くしただけ。予算をこどもに向けていないことだと思う。特定のこどもが恩恵を受けるが許せないというのなら、他のこどもにも予算を使うべきではないだろうか。

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 視察を終えて学校の校庭に出ると、
周囲は高層マンションに囲まれていた。少子化の問題が叫ばれている中、こどもが増えていることは歓迎すべきことだが、予算が限られているとの一言で、じつはこどもへの予算が減らされていないか、とも思えてしまった。

 この環境をどう思うか。それはこどもだけでは解決はできない。環境を決めること。予算の優先順位を決めるのは政治。その政治を選択するのは、保護者であり大人だ。

写真上:すまいるスクールの受付の様子。スタッフがどのこどもが来ているかを確認している

写真中:多くのこどもが楽しそうに遊び、勉強もしているなか、体調の悪いこどももいた

写真下:視察先の学校は、高層マンションに囲まれていた