図書館の憂鬱(2) 直営,民間を考える前に

図書館は直営がいいのか。すべての直営図書館とは言えないが,そこでも課題が多いのが現実だ。



直営自体の定義は難しいのだが,正規の公務員が主な業務を担っているとして,ある自治体の様子を伺った。
伺ったのは,正規の職員ではなく嘱託として働いていた方。その図書館では,多くの嘱託の方々が働いており,窓口業務や本の整理を担っているという。正規の職員はというと,窓口には出ず管理を主に行っているのだそうだ。

それはそれで,業務の分担が決められているのかと思うのだが,利用者からは見えない実態がそこにはあったと憤慨されていた。その内容とは,例えば窓口業務の改善を嘱託から提案しても正規職員には感心がなく,改善が行われない。何よりも,図書館の仕事が好きではなく,いつまでも同じ人が居座らないように図書館内の椅子のクッションを外してしまうなど意地悪なことまですることなど図書館を良くしようとも思っていない。嫌々働いているとしか思えない。それで,給料が嘱託の数倍ももらっているのは納得できない。さらに,市民と接しておりいろいろな相談を受けたり,感謝の言葉をもらうことも多いのだが,嘱託の期限として5年がたったことから契約が更新されず,そのまま仕事を辞めた。図書館の仕事は続けたかったが,給料が上がるのでもないし,あの職場には戻りたくないというものだった。

実際に話の内容が正しいか証明するワケにいかないと思うが,同様のことは他の自治体でも聞くことが多くよく考えてみるべきだと思う。

武蔵野市も含めて多くの自治体では,正規職員である図書館員は図書館員として採用されたのではなく,一般事務職として市役所に採用されている。そのため,どの職場に行くかは本人だけの希望で決まるのではない。本人の意思とは関係なく配属されしまうことが多くモチベーションが高くないとの話も良く聞く話だ。
また,3年程度で配属先が変わることが多い。図書館に限らないが,仕事を覚えたころには異動になってしまうし,実際の仕事は嘱託の方のほうが良く知っているとの話も良く聞く。本人の資質の問題と言えばそれまでだが,果たしてそれで良いのだろうか。

PFIで図書館を運営している他の自治体で話を伺った。ここの図書館では直営という形式ではあるが,正規の職員が約30人に対して民間からの職員が約60名という体制で行われている。
業務内容の区別は行われているのだが,利用者の立場として疑問に思ったのはレファレンスや図書カードの受付時間と開館時間の違いだった。民間活用で22時まで開館とはなっているのだが,初めての人が図書カードを作る時やレファレンスは19時までしか対応していかなったからだ。
図書館は開館していて職員はいるのになぜかと思ったら,この業務は正規職員が担当する業務となっていることから,正規職員の勤務時間に合わせているからなのだそうだ。個人情報に関わるから正規で対応するとの考えかと思うが,図書館の他の業務を閉館までとさらにその後の業務は正規が行わず民間会社の図書館員が担っていることになる。当然ながら,正規と民間会社の職員の給料の差はかなりあるのだろう。

利用者からすれば,正規であろうと民間であろうと嘱託であろうと,みな図書館員だ。図書館員がいるのであれば,必要なサービスは受けたいし,図書館の機能,特にこれからの図書館にはレファレンスが重視されるべきと思っている身には,機能を一日中発揮できない図書館で良いのかと思ったのだ。

利用者にとって,図書館員の雇用形態によって仕事の内容が違うことや権限が違うこと。さらには,雇用期間が限られていること。本人が望んでいない職場かどうかは関係はない。同じような能力で接して欲しいし,あるいは能力に差があるのなら雇用形態ではなく,能力の差で給料を変えるべきだと思う。短時間勤務なら,正規の勤務時間数に比例した額とすべきであり,雇用期間も限定すべきではないはずだ。いわゆる「均等待遇」との考え方だ。

すべての図書館員を同じ待遇で,と考えるべきだが,では公務員でなくてはならないのか,と考えるとそうとは言い切れない。図書館員としての専門職で雇用するのであればまだ良いとは思うが武蔵野市のように三館しかないような自治体では,人事の停滞を招く可能性が高い。例えば,ゴミの処理でもあるように周辺の自治体と図書館だけの一部事務組合を作りこの組合で雇用するほうが良いのだと思う。
とはいえ,このようなことは他の自治体の都合もあり簡単には実現しないだろう。そのことよりも,公務員への風当たりが強い現状では,もっと増やそうと方針に有権者が納得するだろうか。

となると,民間に公務員ほどではないにしろ相応の人件費を計上して委託することのほうがいいのかもしれない。人件費に本当に反映するか分からない。営利企業では好ましくないと考えるのであれば,自治体が出資した外郭団体で専門職として正規雇用,正当な給与を補償するほうがさらに良いのだと思う。

武蔵野市では武蔵野プレイスをスポーツ振興事業団を改組した新たな外郭団体に指定管理者制度で運営を任せようと考えている。以前,議会に示された資料によれば武蔵野市の正規公務員の職員が平均年収約800万円に対して,新規の外郭団体では年収約600円と試算をしていた。この額であれば民間相場から考えても評価できる給与だろう。先に記したような図書館にならないようにするには良い選択で憂鬱が晴れるのではないかと思う。

ただ,快晴にはならないのは,武蔵野プレイスがあと二年で開館するというのに今から図書館員が育てられるのか。何よりも専門職を雇用するのかとの点が明確ではないことだ。給食でも同様のことを考えているが,21年度予算審議のさいに専門職を雇用すべきと質問をしたところ,質を保つためにも専門職を雇用するとの答弁があった。図書館でも同様な方針を明確にすべき時期だ。

多くの自治体では,直営の図書館でも正規は少なくなり嘱託や臨時など非正規職員が多くなっている。すべてではないだろうが,今回紹介したような例が多かれ少なかれあるのではないか。直営,民間が良い悪いを考えるよりも,図書館員が誇りを持って働いているのかどうか。図書館の理念を達成するために働く人たちが相応の給与が得られているのかどうかをまず考えるべき。このほうがはるかに問題は大きいと思う。

「情報が民主主義の通貨なら図書館はその銀行だ」(1998年アメリカ図書館年次大会でウェンデル・フォード上院議員が行ったスピーチ)であるなら,民主主義を担う人が官製ワーキングプアであってはならないのだ。