図書館の憂鬱(1) 図書館員の適正給料

多くの公立図書館で指定管理者制度や業務委託による民間事業者が図書館の運営を担っている。教育施設に営利目的の民間はなじまない、直営で行うべきとの批判は多いが,ならば、その民間事業者の図書館はどうなのか。実際に図書館の運営を行っいる民間事業者はその批判をどのように思っているだろうか。当事者から話を伺った。



民間委託や指定管理者制度での問題点に、受託した事業者での人が育たない。育てることができないことがある。これは、指定管理者制度で最長5年という契約期間が限られており、契約が継続されないリスクから継続して社員を雇用することができないことが大きな理由だ。業務委託でも短期間の入札になる場合が多い。
そのために、正規ではなく雇用期間を決めることができる非正規で人材を採用せざるをえず、人材を育てることができない,質の低下へとつながることになる。

だから,民間ではだめなのか。単刀直入にこのことについて伺うと,確かに契約の補償がないことから正規雇用は難い面がある。しかし,そのことよりも,契約の考え方ではないかという。

それは,この会社の図書館員の平均年収は約250万円だが,これはあくまでも発注者側が求めた額だからというのだ。
この会社では業務委託のケースが多く,発注者の求める額で人材を集めることになり,結果として給与に反映できないのだそうだ。指定管理者制度となると,基本は入札となるため価格競争となり,結果として人件費を抑えることになってしまうという。

プロポーザル方式など,請け負う側がこのようなサービスを提供するとの提案を元に発注者側が,いわば質を審査して決めることは,制度上可能だ。だがそのさい,図書館員の給与が年収250万円で算定している業者と500万円の業者が提案してきた場合,どちらを選択するだろうか。質が同じ,あるいは同程度というのであれば,安いほうが良いとなるのだと思う。公共図書館には無料の原則があり,収益を上げることは難しい。人件費がコストの大半を占めることを考えれば,500万円の年収の業者を選択することは,現実的にないのだと思う。

コストは税金であり,安いほうが良いとは思う。しかし,その結果が人材を正規雇用できないことになり,質を保つことが難しくしている,さらには,その悪循環が社会不安にもつながっているのではないか,とも思う。市民が自ら社会不安の元を作り,質を下げていることにもなっていないだろうか。

発注者とは自治体であり,そのサービスの対象は市民だ。つまり,市民サービスを安価な人件費で行うべきかが,図書館の民間委託の問題に含めれている。
行政のコスト削減は,私も必要だと思っている。しかし,質を保つためにもらうべき給与,必要な給与は当然のコストとして考えるべきだと思う。いくらが適正との答えは明確ではないが,ここに図書館の今後を考える憂鬱がある。これは,市民に問われていることでもあるはずだ。

ある業者の方は,事業費を直営と同じにして,内容,質で競争させて欲しい。そうすれば,現状よりも倍以上の質を提供できる,と話していた。他の業者の方は,現状の公務員の給与は高すぎる。民間並みで行うべきではないか。弊社の平均年収250万だが,質を保つにはもっと出すべきであり出したいが契約上無理がある。せめて,民間企業の平均年収は必要と考えて欲しい,と話していた(※)。

言うまでもなく図書館の質は,図書館の掲げる理念と理念をどのように実現するかの戦略にかかっている。そして,理念の実現を担うのが図書館員であるべきだ。本を貸し出すだけなら機械で間に合うのであり,なぜ図書館員が必要なのかも明確にすべきだろう。
ここが明確ではないかぎり,コスト論だけで終始してしまうことになる。それでいいわけがない,と民間事業者の話を聞いていて思った。

民間が悪い良いと考える前に,図書館の理念はなにか。そして,その実現と図書館の質を保つために図書館員の給与はいくらが適正なのか,図書館としてのコストはいくらがいいのか考えるべきではないだろうか。

では,直営ならいいのか。それは,次回に。

※地方公務員の平均年収は728.8万円。民間上場企業の平均年収は589.3万円。民間平均は,439.9万円(年収ラボ・平成18,19年最新版より)。