給食の安全性と自治体の自治レベル

3月31日に開催された「学校給食から食の安全を考える武蔵野シンポジウム」にでかけてきた。食に不安が多いなか学校給食でも注意をしていないと安心できない状況との話があった。注目すべきは,給食の質は自治のレベルが問われることになるとの話だろう。


このシンポジウムは,前半が「食品の裏側」と題した講演会。後半が「学校給食の安全性をいかに確保するか」とのパネルディスカッションとの構成。私は,都合がつかずパネルディスカッションでの話を伺うのみだった。

主催は,学校給食から食の安全を考える武蔵野シンポジウム実行委員会(自治労,自治労東京都本部,自治労武蔵野市職労,東京公務労協)。パネルディスカッションは,野田克己さん(大地を守る会専務理事)がコーディネーターとなり,佐々木輝雄さん(日本獣医生命科学大学教授),牧下圭貴さん(NGO「農と食の環境フォーラム」代表),島田弘志さん(自治労武蔵野市職労執行委員)さんがパネラーとなっていた(佐々木さんは,武蔵野市中学校給食検討委員会委員長でもあった)。

パネルディスカッションでは偽装食品や食品事故が日常的になっていることは,何か社会に足りないことがあるからではないか。これからの農業をどうすべきかなど日本全体としての問題も含め多様な課題提起がなされていた。

印象深かったのは,このような状況で学校給食でも安全性を保つのはむずかしい,との話があり,保つには調理する現場の人間がどのような食品なのか説明できるかがカギでないか,との話が島田さんからあったことだ。

偽装食品であれば,だまされてしまうのだから本当に確かなのかは分からない。学校給食の現場の人間がどこの誰がどのように作っているかが分かれば,食品を説明できるし信頼にもなるのだろうと思った。

学校給食を民間委託したところでは,食材を行政が指定したとしても仕入れ先は業者任せになることや行政がコスト削減を求めることで,結果として信頼しにくい食品になってしまう可能性があることも報告されていた。

どのような食品を選び購入するかも手間がかかり当然ながらコストが発生することになる。コスト削減の努力は必要としても,一定のコストは安心な食材のためとして行政,あるいは議会や市民が考えられるかが学校給食の安全性に影響するということだろう。

また島田さんが「工夫の余地が高い給食がいい給食。栄養士の工夫できる余地が高いか。工夫できる調理員がいるかどうかだ」と話されていたことも印象的だった。コスト削減は,それだけ食品選択の自由度がなくなることにもなる。

コストといえば,民間委託のことと単純に考えがちだが,佐々木さんからは,直営でも経費削減で正規職員が少なくなり非正規雇用(短期間雇用)が増えることで質の維持ができないとの問題点の指摘があった。このこともよく考える必要があるはずだ。
さらに,食文化を伝えることに学校給食が貢献していると教員も調理人も捉えるべき。食は歴史を動かす,とのコメントも印象深い。

直営だから,民間だからではなく,コスト削減ばかりに目がいくと,調理人の人件費を下げることをになり,その結果,短期雇用となり技術を蓄積できないことになる。当然ながら,調理の工夫の余地ができない調理人になることになる。
質を保つには,安全な食材を得ることや栄養士は重要なポイントだが,食材の目利きができ工夫した調理ができ,なおかつ効率的にできる調理人も重要と考えるべきだと思う。
調理人に湯水のようにコストをかけろとか,公務員にすればいいとは言わないが,正規雇用であり,その技術と食文化の担い手としての対価は必要と考えるべきだ。とはいえ,どの程度まで必要かを明確にするのは難しいのだが。

牧下さんは,私も参考にさせていただいている「学校給食ニュース」を運営されているが,各地の学校給食の現状報告があった。暗い話題がほとんどだったが,今治市の例を紹介して,市民ががんばっているところが給食もいい。給食は自治体が運営するのであって,良くするも悪くするのも自治体であり市民の責任だ。地域の子どもがどう育って欲しいかのビジョンが重要であり,給食は自治のレベルをかえることになる,との言葉も印象的だった。

総じて武蔵野市の給食の質は高いと評価されていたが,今後はどうなるのか。給食の安全だけではなく,武蔵野市の自治のレベルが問われているのかもしれない。

【参考】
2009春闘 公共サービスキャンペーン
食の安全をどう守るか 自治体と地域にできることとは
武蔵野でシンポジウム開催

川名ゆうじの武蔵野blog 食育の成果(今治市の給食)