NPOとの協働 行政はどこまで関わるべきか 推進するファクターは

NPOと行政の対話フォーラム09に参加した。分科会では、1%条例で良く知られている市川市と都道府県として初めて支援先のNPOを指定できる基金を作った埼玉県の話を伺ってきた。NPOとの協働は掛け声だけではなかなか進まず、行政によるきっかけづくりも重要であることがよく分った。そして,進めるためのファクターは何かの議論も印象深かった。

NPOと行政の対話フォーラムは、日本NPOセンターの主催によるもの。日本NPOセンターで研修を受けている自治体職員が中心となって開催しているイベントで,研修による知識や情報,人脈を活用した,いわば研修成果の“卒業試験”との位置づけだ。対話が題されているのは,何よりも必要なのが「対話」ではないかとの意識からだという。2002年からこの題が付けられて毎年行われている。

フォーラムは,全大会と分科会との構成で,私は『第三分科会 NPOと行政が共に考える、市民社会の「体」力づくり ~行政からNPOへの資金支援を通じて考える~』に参加した。

分科会は、NPOの活動には資金が必要になるが、資金支援は、栄養になる面と毒になる側面があり、行政がどのようにサポートすることがいいのかを事例を交えながら議論するとの内容だ。

事例報告があったのは、都道府県では始めて支援する団体を指定できるNPO基金を作り上げた埼玉県と市民税の1%を支援する仕組みを作り全国的にも有名となっている市川市。
どちらの例は、市民が指定したNPOへ資金援助するシステムは同じだが、その資金の考え方は異なってる。

□埼玉県のNPO助成制度

埼玉県の場合は、NPO支援のための基金を設け、この基金へ資金を提供してくれる企業などへ税制上の優遇や提供企業の宣伝を行うことで資金を集め,この資金をNPOへ助成するとの考え方。当初は行政からも資金提供をするが,将来的には行政から資金をなくす自立型を目指している。行政が行うのは,情報提供とNPO活動に必要な助言が中心だ。

興味深いのは,助成はするがお金を渡せば終わりではないことだ。
助成金の申請書には,何をどのようにして実現するのか,いわばマニフェストを提出してもらい審査をする。助成後も事業報告書を提出させて公開。評価を行いよりよい事業内容にするために助言などを行いNPOのモチベーションを高めようしている。当然ながら成果が見いだせない,改善の見込みがなければ次がないということもであり,PDCAサイクルが考えられていることになる。

行政はお金を出しただけ。もらった方も,既得権と思いがちなこの種の制度の課題に行政が理解していることは,他の自治体でも参考になるはずだ。
ただし,昨今の経済不況で企業からの資金提供の雲ゆきやあやしいとは,担当者の話だった。こればかりは,より難しい課題だ。

□市川市1%支援制度

市川市(人口約47万人)の制度は,市の個人市民税額約380億円の1%の約3.8億円を市民活動支援に使おうとの考え方だ。制度はハンガリーなどで行われている「パーセント法」がヒントになっており市民団体や公募市民で作られた「まちの縁側」構想から提言されたものだ。

市の担当者は,千葉県知事選よりも都知事選挙のほうが関心が高い“市川都民”が多く住む地域特性があり地域への帰属意識が希薄との課題があっため、市民力、地域力を高めることが必要との考えで1%支援制度ができた,と説明していた。

この制度の成果としては以下の点を示していた。
・市民活動団体の活動や事業をPRする機会が飛躍的に増加した
・事業の公開、市民への説明責任を通じ、団体の意識が変化した
・市民活動への理解促進と地域への広がり及び市民との協働が推進した
・他自治体へも波及し互いに情報も得て改善している

この制度は,「パーセント条例」とも呼ばれ,全国的に知られており詳細の説明の必要はないだろう。概略は市川市のサイトにあるのでご参照を。 

担当者の説明で特徴と思えたのが,制度自体は最初から完璧なものではなく,修正しながら実施されていることだ。

例えば,一人で何団体も加盟している人が指定し難いと意見があり,指定できる団体を1団体から3団体へ増やしたことや納税していない人でも地域活動を行っている人は多く,このような人の意向も反映するためにボランティア活動でもらえる地域ポイント制度を支援に使うようにも変更したとしている。

試行錯誤をしながらでも,まず実施することが重要ということだろう。

□行政がどこまですべきか。推進するファクターは?

事例報告の後,現状の課題について会場を含めて議論が行われた。テーマのひとつは,行政がどこまで関わればいいかだ。

二つの事例は,資金を民間から集めるか,税金から支出するかで異なっているが,どこまでかと問われると,市民やNPOに力が付けばサイクルが回れば行政の役目は終わると考えていることでは一致していた。しかし,現状ではいつまで,どこまでは明確になってはいなかった。

会場からは,行政から助成金を得られると自ら市民や企業から得ようとする努力が失われたり,行政頼みになり団体が自立しなくなることもある。本来は行政がやるべきではないとの意見もあった。
結論は明確にはならなかったが,市民活動を活性化するには,きっかけは必要だ。行政本来は入るべきではないとの考えもあるが現状を考えれば 対処療法的な制度としては有効だ,との考え方にまとまっていたように思えた。 

この課題は,どの自治体でも同じだろう。

もうひとつの大きなテーマに,このような市民活動支援を推進するファクターは何かがあった。

市川市の場合,全国初なので議論はあったが必要な制度と理解してもらった。できないことを考えるのはいくらでもできる。議会では小差の賛成というぎりぎりだったほどだが,市長のリーダーシップのもとで実施されたことを担当者が強調していたことは興味深い。

埼玉県の担当者は,首長のリーダーシップもあるが、市民環境の後押し,必要としているがいること,理解が促進していったことが一番の理由だとしていた。リーダーシップだけではなく市民意識も重要ということだろう。

とかく新しい制度には批判が多い。新たなことを始める,時代を切り開くには突き破る力と理解する市民が必要ということなのだと思った。

□組織票対策

会場からの質疑があり,助成金を得ようと特定団体の組織票が動くことはないのかを質問してみた。

市川市の担当者からは,批判があることは承知しているが組織票は否定していない。実際に助成をしたことでグランドが良くなったり不登校対策が進むなど市民へのサービスが高まっている。団体の努力の結果と考えているとしていた。
また。この課題に対して,理想,夢ではあるがとの前提だが,NPO活動が認められ支援されている正当性のバロメーターと考えればいいのでは。との意見もあった。

弊害を考えているよりも,まずは,理想のために動き出すことが何よりも必要ということだろう。

□協働は目的か

全体会のまとめでは,地域社会のために行うのであって協働が目的ではない。行政と組めばいいのであればやればいい。大きなミッションを忘れてはならない,との発言が印象に残った。

また,このようなフォーラムに参加できるように行政内部の空気を変える必要もある。たいていは,トップからやれといわれて動くが、ボトムアップでも変えるべきではないか,とのある自治体職員の発言も印象深い。

このフォーラムは昨年も参加しているが,今年の案内は昨年知り合った自治体職員からいただいたものだった。人脈だけではなく見識,情報を深めるためにもこのようなイベントをもっと活用するべきではないだろうか。

議員という立場は微妙かもしれないが,「対話」によって,NPOや自治体職員の考え方への理解がすすみ意義深いフォーラムだった。

【参考】
埼玉県NPO情報ステーション 
市川市「市民活動支援制度(1%支援制度)」