介護保険料 値下げの“からくり”と高額な武蔵野市の理由

3月9日の市議会厚生委員会で介護保険料の改定を行う補正予算が審議され委員全員の賛成で可決、13日の本会議でも全会派一致で可決し成立しました。このことにより、画像のように、現行の10段階から14段階に細分化され、低所得者の保険料が安くて済むように配慮されることになります。しかし、保険料は月額4700円と多摩地域で最も高額です。この理由は何かを委員会では質問してみました。
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また,先の国会で決まった介護従事者への給料加算となる交付金ですが,この委員会での質疑からでは,給料アップにはつながらないばかりか,小手先の操作でごまかされているのでは,とも思えました。

介護保険料は,自治体によって異なります。これは,自治体ごとに高齢者人口,要介護者数、サービスに要する費用など内容が異なるために自治体の特性に合わせた保険料としているためです。要介護者が多かったり,サービス量が多ければ保険料は高くなりますし,少なければ安くなります。単純ではありませんが,サービス内容を下げれば保険料は安くなりますし,逆に高齢者施設が多ければ高くなることにもつながります。つまり,保険料だけで良い悪いを判断はできません。

そのため,なぜ,武蔵野市の介護保険料が高いのか。相応する内容以上のサービスがあれば納得できますので,このことについてを質問してみました。

■武蔵野市の介護保険料が高い三つの理由

答弁によると理由は三つとなります。

1)65歳以上の高齢者のうち75歳以上の高齢者が占める割合が東京都平均よりも高い。
2)桜堤の特別養護施設など大型施設の建設がある。
3)在宅サービスが他の自治体よりも充実している。

このうち,桜堤に22年4月に開設が予定されている特別養護老人ホームはショートやデイを除くと100床のベッドがありますので,この施設だけで約200円が上がることがこれまでの議会答弁などで明らかになっています。
このように書くと,特養建設へ批判のように思われるかもしれませんが、そもそもこれまでに特養を作ろうとしてこなかったことのほうがおかしなことでしょう。

■施設よりも在宅重視が武蔵野市

それはさておき,在宅サービスが充実していることはどのように見るかですが,先頃策定された福祉総合計画にその指標が示されています。

「居宅+地域密着サービス受給者と第一号被保険者一人あたり居宅+地域密着型サービス給付月額」というものです。kyuukin02
これによると,東京都平均の給付額が1万464円、利用率が10.32%であるのに対して武蔵野市は,給付額1万3011円,利用率11.75%と利用する額(サービス量)とも利用する人も多いことから利用料が高いことが分かります。

また,福祉総合計画には,給付指数が示されており,武蔵野市の高齢者サービスの特性が示されています。
これによれば,特養などの施設でサービスを行うのではなく,なるべく在宅でサービスを受けるような施策が行われていることが分かります。kyuuhusisuu

武蔵野市は地価が高く全国で2位という人口密度の市ですから,施設を簡単には作れないために在宅重視にならざるを得ない背景が大きいのですが,施策の方向として施設入所重視ではなく,在宅での介護重視なのが分かる指数ともいえます。

住み慣れた自宅で生活することは望まれることですが,介護する家族への負担が多くなるという相反する面もあり,在宅重視が良いとは言えません。在宅介護を支援するサービスも重要となります。この点で武蔵野市の在宅サービスが多いことは,一定の評価ができると思います。しかし,施設が必要な人も場合も多いはずです。そこへ,新たなに特養が作られ施設も増えるとなると,介護保険料が高いのは了承せざるを得ないと思いました。

■最初は安い“からくり”

さて,この議案の質疑のなかで現状の介護保険でのポイントと思えることがありました。
それは,介護従事者への賃金を上げるために3%の介護報酬が上げられることですが,そこには,確実には賃金へと反映されない“からくり”があったのです。

答弁にもありましたが,3%の財源となるのは「介護従事者処遇改善特例交付金」ですが,あくまでも“特例”であり,継続的なものではありません。つまり,次にはあるかは分かりませんから,賃金を上げたとしても,交付金がなくなりましたから下げます,とできるのか,との大きな問題点があるのです。

また,利用に応じて点数が加算され賃金へと反映されますから,利用者の利用料へも影響します。果たして事業者が賃金を上げますから,利用料も上げますと利用者に言えるのか,できるのかとの課題もあります。

なによりも,この交付金が年ごとに段階的に給付されることにも問題があると思えました。
交付金は,最初の年に手厚く交付され,年ごとに少なくなる設計となっているからです。最初の年は交付金が多いので保険料を安くできますが,次年度は少なくなるので値上げ,2年後にはさらに値上げという状況になることになるからです。
さらに言えば,介護保険は3年ごとに料金を見直すことになっていますが,高齢化が進む現状では利用数が減るとは思えず3年後の改訂時にはさらに値上げが当然ながら予想されます。

つまり,21年度は保険料が値下げになり,良いことが行われているように思えますが,次年度にはすでに値上げが考えられており,再来年度にも値上げになるとなっているのです。

さらに,交付金には事務費としてこの料金について宣伝する費用も計上されています。まさかとは思いますが,総選挙前に値下げしたと大いに宣伝して得点稼ぎに,なんてことではないのでしょうね…

■武蔵野市は一定額の保険料に

武蔵野市は毎年値上げにするのではなく,3年間をトータルして考え一定の保険料とする,としています。毎年上がるのでは市民負担が高くなるとの考えですが,毎年値上げになれば苦情も多くなることが当然予想され,事務作業もたいへんになることも考えればこの考え方は非常に良いことだと思います。TEIGAKU
国の考え方はとは違うのだそうですが,地方分権の時代ですから自治体自ら考えたことで国も認めていると答弁にはありました。

国の言いなりにならないことも重要です。

先に「介護保険 3%アップで良くなるのだろうか」の記事を書きましたが,実際には反映されることは考えにくいのが実情です。根本的に介護保険を考え直す必要があると思います。今回,3%アップで良いことをしているように思えますが,そもそもその前に下げているのですから,少し戻っただけというのが実際なのですから。

2兆円という定額給付金の支給が決まりましたが,その一方で,毎年220億円の社会保障費を削減することになっています。目先のお金に踊らされないようにしなくてはなりません。

なお,新介護保険料で最も所得が低い人の保険料が上がっていますが,この段階の人は生活保護の対象となっているため実際には保険料を払うことはありません。