アートな焼却場 [視察報告3]

naka01市議会厚生委員会の視察でのテーマのひとつにごみの焼却施設がありました。武蔵野市のごみ焼却場であるクリーンセンターは、近く建て替えが必要となっているからです。

その焼却施設のひとつが、広島市の中工場。美術館の設計などで有名な建築家を起用したことで、焼却場とは思えない施設となっています。武蔵野市では、市内に焼却場を建設せざるえませんので、住宅街のなかに建設することになります。そのため施設外観は重要視すべきと思いますが、そのために効率が悪くなったりコスト高になっては困りますので、この点を含めて視察をしてきました。


広島市中工場は、デザインの社会資本を整備しようと、広島市が進めてきた「ひろしま2045:平和と創造のまち」事業のひとつとして建設されたもの。平成16年2月に竣工した新しい施設です。
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焼却施設の能力を示す焼却能力は600t/日で、武蔵野市で想定している新たな施設が約120t/日((仮称)新武蔵野クリーンセンター施設基本構想より)ですから、約3倍の規模という巨大な施設です。

最新の環境対策が採用されていますが、最も特徴となるのは施設の外観です。設計者は、谷口吉生氏。豊田市美術館や葛西臨海公園展望広場レストハウス、東京国立博物館法隆寺宝物館、ニューヨーク近代美術館新館、香川県立東山魁夷せとうち美術館などで知られる建築家です。

施設のコンセプトは、『前方に海が臨み後方に市街地が広がる都市の玄関口であり、「水の都ひろしま」構想の趣旨に沿って、環境を守り、つくり、伝えていく市民にも親しまれる豊かな自然を水辺のコミュニティ空間を提供する』(パンフレットより抜粋)というもの。
雑誌「新建築」2004年7月号に掲載されている谷口氏のインタビューには、ゴミ焼却施設には見えないように隠している建築が多くあるが、現代の都市に必要な施設のひとつとして、外部は意図的に工場をそのまま表現し、内部に公共的な空間をつくり、都市施設としての価値を高めようとした、とあります(arch-hiroshimaより)。
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写真でも分かると思いますが、ガラスを多用し施設を見せようとしていること。施設の中央部に木材の床で作られ海に抜ける通路があり焼却施設をアート作品にみたてて、あえて見せようとしています。

このようなアートにこだわる施設では、本来の機能に支障が出てきてしまわないか。設計費用やランニングコストが割高にならないかが懸念されます。税金を使う施設ですから、このことは重要な課題になります。
そこで、視察のさいにこのことを担当者に質問してみました。
答えは、施設機能については特に支障はない。建築費用も割高ではないと考えているとしていました。

理由は、プラント部分(焼却炉やボイラーなどの機能施設)と外装部分の設計を分離発注したことで、機能部分を先に考えて設計ができ、デザインのために機能を変更していないこと。外装部の設計費用は、通常と同様で有名建築家だからといって特に割り増しになっていないからなのだそうです。naka04

建築費全体で考えると、外装デザインに凝り公共スペースを設けることで割り増しになる部分もあるが、内装を簡略化した部分もあり、相殺すると通常の施設を変わらないはずだ。

ランニングコストについては、詳細な計算はしていないが、ガラス面の清掃費用はかかっている。見学用ルートが多いのでエレベーターの保守点検費用は通常施設よりもかかっているのではないか、としていました。

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★中工場の外装デザインへの賛否は主観ですので何ともいえませんが、このような手法は非常に魅力的だと思いました。武蔵野市の新クリーンセンターでも、たんなる施設、工場としてではない建築作品として市民が楽しめる施設にしたほうがいいと思いました。

ただし、中工場は施設規模が大きいことから、通常の設計費用で有名建築家に設計を頼めたのかもしれません。このあたりの実際の費用については、もっと精査が必要でしょう。武蔵野市としてのコンセプトを示し、機能だけの設計を終えた後で外装設計をプロポーザルで公募してもいいのではないでしょうか。

施設は作るだけ、機能だけではなく、市民も楽しめる要素も今以上に必要なのは確かです。新クリーンセンターは、迷惑施設だと思い込まず、夢も語れる施設にしたいですね。

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【参考】
arch-hiroshima 広島市環境局中工場
 広島の建築・建物・街並み・都市計画・まちづくりに関する話題を写真と共に紹介するサイト
谷口吉生のミュージアム

写真(上から)
(1)広島市街地側からの中工場入り口

(2)内部のプラントを眺める。下に見える白い柱とガラスに囲まれたスペースは通路。

(1)から(3)へと抜け、(5)の公園へとつながっている

(3)見学ができる通路。(2)で見える場所

(4)ガラス面がないような場所は内装が省略され床材も質素な素材、装飾もなく費用が削減されている

(5)一方の出入り口は海に面しており、公園になっている

(6)海側から見た通路。通路は施設の二階部分になっており、1階部分を収集車などが作業をするスペースになっている