システムキッチンを入れても料理はうまくならない~自治の基本

12月21日に開催された「分権時代の自治体運営の基本ルールを考えるシンポジウム」に参加してきました。何が課題なのか、何をどうしたいのか分かり難い内容だったと思いますが、武蔵野市で自治に的を絞ったシンポジウムは初めてだと思いますので今後に期待をしたいと思います。

パネルディスカッションのまとめで、コーディネーターがまとめた言葉「システムキッチンをいれて料理はうまくならない」が印象に残ったシンポジウムでした。


シンポジウムの主催は、武蔵野市。第1部に辻山幸宣さん(地方自治総合研究所所長)によるこれまでの日本の自治の歴史と2000年の地方分権一括法による新たな自治の考え方についての基調講演。
第2部に、田村和寿さん(桐蔭横浜大学文化政策研究所教授)をコーディネーターとした、パネルディスカッションとの構成でした。

パネリストは、篠原二三夫さん(NPO市民まちづくり会議・むさしの理事長)、木崎剛さん(武蔵野青年会議所理事長)、安藤雄太さん(東京ボランティア・市民活動センター副所長)、邑上守正武蔵野市長にアドバイザーとして辻山さんが加わるという多彩なメンバーとなっていました。

◇基調講演 地方分権を我が物にしているか

詳細な内容については報告書が出されるようなので、そちらに譲りますが、基調講演で印象に残ったのは、2000年の法律改正から分権時代となり7年がたったが 分権時代を我が物にしているのか。受け取り側が準備できているのか。考えるにはいい時期だ、との基調講演での話でした。

地方分権一括法は、地方の行政は、その住民が自分たちで決定し、その責任も自分たちが負うという行政システムを構築することが目的。それまでの機関委任事務が廃止され、国と地方公共団体が上下の関係から対等の関係に制度改正を行い、国の指示で市役所の仕事をしていたことが、やるやらないを含めて市が自らどのように行うかを判断できるようにとなっています。

機関委任事務は、市町村の仕事の約4割の仕事を占めていたとされるもので、地方自治体の裁量範囲が飛躍的に増えたともいえます。ですが、財源がその分だけ自治体に移されたかといえば、そうではなく、裏読み的に見れば、国は金がなくなったから、口も金も出さない変わりに地方が勝手に考えてよ、という制度です。

特に地方自治体による条例制定権が拡大されたことで、市が独自に制度を作りルール(条例)を作ることが可能ともなっています。

その一方で、条例制定権が拡大されたことで、歩きながらたばこをすうな、ノラ猫に餌をやるな、犬猫を10匹以上飼うなという条例もある。これらは本来、市民社会が自ら守るべきルールであったはずで、これが崩れたことから公権力に頼るようになったことになり、ほんとうにいい社会なのか。

以前、松戸市に「すぐやる課」ができ、すばらしいことだと歓迎されたが、やってきたことを見ると、近所同士で相談しながら考えることを奪い取ってしまったのではないか。そのために、行政が抱える仕事が多くなりすぎたのではないか。サービス行政でいいのだろうか、との疑問も示されていました

これは「すぐやる課」があるなしにかかわらず、多くの自治体で抱えている問題ではないでしょうか。 

つまり、以前は子育てや介護も含めて、近所同士など地域コミニティでの共同作業でできていたことが時代の変化で成り立たなくなってきており、それが、自治体の仕事になってきている。さらに、法律に反していなければいいという考え方も増えてきている。ルールを自ら制定できるようになったものの、どこからどこまで作るべきなのか。このままの地域社会でいいのかも含めて考える時期になっている。

だが、地方自治体や住民、議会が意識しているのだろうか、ということだと思います。

地方分権とは、「地域のことは地域で決める」ことであり、そのためには、行政、市民、議会が何をなさなくてはならないを決めること。そして、誰がどのように治めるのかの仕組みが必要になり、その仕組みづくりには住民関わることが必要になる。そうなると議会の位置分かりにくい、との指摘もありました。

国から指示されていた仕事をしているのあれば、議会の位置づけがあいまいなままでも良かったのかもしれませんが、自治、つまりは、地域のことを自ら決めることになれば、それは議会の仕事になるはずです。
自治とは、ルールだけではなく、マナーや慣習までも含めれると思いますが、このことを議会が分かっているのかとの課題もあるのではと思いました。

この仕組みのひとつとして自治基本条例がありますが、実際に機能しているは少ないとの指摘にも考えさせられるものがありました。

◇パネルディスカッション  議会の存在

第2部では、パネラーがそれぞれの立場から、自治やまちづくりに関係する事例が紹介されていました。それぞれ興味深い話でしたが最も興味深かったのは、議会の存在についてのディスカッションでした。

先の第四期長期計画・調整計画の策定委員長でもあった田村さんが、策定過程で議会が不在であった、話をするだけでは違和感があった。あるいは、制度改革といえば議会ではないか、との投げかけがあったからです。

辻山さんは、議員は行政ではできないことをしている。行政の縦割りでは見ないことができるのが議員。それを背負って活動するのが議会ではないか。選挙により市民の共同信託を受けているはずだが、ガードレールを作れなど、その“かけら”しかしていないのでは、とのコメントには考えさせられるものがありました。

多様な市民の考えを反映するために、一定数の議員が必要な議会ですが、多様な意見をまとめていく作業ができているのだろうか、との課題があると思うからです。
これは、多くの議会の仕組みとして、議案の賛否だけが求めれられていることや“質問”が中心であり、執行の明確なチェックや改善についての手法が定まっていないこと。議会の総意(つまり住民意思)としての政策提案制度が明確になっていないことに理由のひとつがあると思います。

このことを変えよう、議会をより本質的なものにしていこうとの議会改革が各地の議会で始まっており、改革のメルクマールとして議会基本条例があると思いますが、このことについては、さわり部分しかパネルディスカッションではありませんでした(このことは、これまでに書いてきている議会改革の話とほぼ同じです)。

ほかにもいろいろな興味深い事例が出されていましたが、そのうえでの課題整理やでは何ができるかなど次を考えるディスカッションにまでは踏み込めなかったのは残念でした。
これは、時間の都合もありますし、このような幅の広いテーマを行うのですから、第一回目としては仕方がないことです。次へ期待したいと思います。

このパネルディスカッションの最後に田村さんが、基本ルールなら単純、明確にする必用があるだろう。ルールは、自治の道具でありどう使っていくか、使いやすく実行ができるか重要であり「システムキッチンをいれても料理はうまくならない」と話されていたことが、今後の大きなテーマになるのだと思いました。

基本ルールを考えるのなら、自治をどう考え、どのような社会がいいのかを議論を重ねて明確にしたうえで、その社会を実現するための道具として考えるべきということだと思います。そのためには、住民、行政、議会の役割の明確化も必要でしょう。

基本ルールは、自治基本条例になるのかもしれませんが、条例を作ることが目的ではなく、よりよい地域社会を作ることが目的であるはずです。そシステムキッチンがなくてもうまい料理はできるのですから、条例をつくらなくても実現できればいいのです。

問題は、作り手しだいということでしょうか。条例だけに囚われてしまうと、そもそもの目的が失われてしまいますから。

【参考】
総務省 地方分権
自治体議会改革フォーラム (議会基本条例制定の情報ページもあり)