まちを味わい深くする行政のしかけ

NP0小田原まちづくり応援団による「政財界の邸園巡りと邸主が愛したグルメツアー」に参加してきました。街並みや歴史的な建造物を巡るウォーキング・ツアーはよく見かけますが、グルメが付いているからというわけではなく、ひと味もふた味も違った内容でした。市民との協働を考えること、NPOと行政との関わり方についても非常に興味深いプロジェクトでした。
o1


今回、このツアーについて予備知識はほとんどなく、小田原に庭園があることやカマボコや海産物以外にどのようなグルメがあるのかも分からない状況での参加でした。ウォーキングツアーは、最近では人気が高くいろいろなとこで実施されていますが、他とどう違うのか。NPOが関わることでどのような味が加わるのかとの興味本位での参加したのがこのツアーです。

■コンテンツ

小田原と言えば小田原城ですが、このツアーでは全く触れることがありませんでした。suidou

それよりも、明治維新以降、政財界の大物がかまえていた邸宅(別荘)に注目して、当時の歴史的な背景や茶会が催されていたことなど新たな文化がこの地で生まれていたこと。箱根越えの宿場町でもあったことから江戸東海道中箱根越え3大名物老舗巡り(丸薬ういろう・梅干し・塩から)も組まれており、小田原ですぐ思い浮かぶような内容ではない、あまり知られていない歴史を紹介していただいたことには、ガイドブックで分からない楽しみを得られたと思いました。

また、ウォーキングに出発する前に地形的なことやかつては箱根の山越えを控えた宿場として東海道五十三次中最大の規模を誇ったまちであったものの、東海道本線が当初は小田原を迂回(現在の御殿場線)してしまったためにまちの勢いがなくなってしまったこと。関東大震災の震源地となりまちの崩壊があったこと。後に東海道線の延伸で再びまりが変わり現在へといたることなどまちづくりの歴史の解説があったことで、まちへの興味をより深くしていたと言えます。

ツアーのコンテンツのなかでも、特に興味深いのが名称ともなっていたグルメという要素ですが、これは、ツアー単独でのプログラムではないことにより可能となったものでした。

oda12同時期に神奈川県の「邸園文化圏再生構想」事業のひとつとして行われている「湘南邸園文化祭2008」や小田原市などが主催する「板橋秋の交流会」が開催されており、そのプログラムのひとつとして、地元有名ホテルの料理長による「小田原ブイヤベース」や地元ベーカリーの限定品「かまぼこサンド」が販売されており、地元で有名な豆腐店や漁港にある食堂も合わせて歩くことによりできたプログラムだったのです。

このことにより、単に歩くだけではない。美味い店歩きだけでもない。知られていない歴史歩きだけでもなく、いろいろな要素を取り入れ、さらに他のイベントの「美味しいところ」もつまみ食いしながら歩くという、バラエティ豊かなツアーとなっていました。そのせいか、飽きることはなく時間を楽しめたのだと思います。

また、国内で最も古い水道があることなど普段から街を探索していることで得られた情報、政財界の大物の別宅があったということは、その裏に政治的なことが行われていたはずだなど個人的な主観に基づいた解説も多く、興味深いものでした。

o2NPOという仕掛け

このツアーのポイントとも言えるのは、上記の内容もさることながら、主催者のNP0小田原まちづくり応援団(通称:まちえん)に負うところが大きいと言えます。

NPOの構成は、市民、大学(研究者)、個人事業主や企業、行政などと多様ですが、多様な主体が、互いの持ち味、情報を出し合うことでツアーのおもしろさ、バラエティにつながり、味わい深さになったのではと思えました。

そして、この活動や「NP0小田原まちづくり応援団」ができるきっかけともなった小田原市の政策総合研究所(自治体によるシンクタンク)の存在が大きいと思えました。

この研究所は、市の企画部企画政策課に設置された組織で、行政、学識、市民による研究員により政策を立案し実行するというもの。しかも、シンクタンクではなく、ドゥータンク(考えるだけではなく実行する組織)だったとNPOの方が話されていましたが、フィールドワークを中心にして、三年という年限を区切って行い、年限が過ぎたら行政が手を引くことで自立性を考えていたことなど他の自治体としても参考になる事例ではないかと思いました。

とかく住民と行政の協働が昨今では言われていますが、対等関係で運営できる組織は、そう簡単にはできると思えませんし、住民にとっても作り出すことは容易ではありません。動き出すきっけけづくりとして非常に興味深い事業だと思いました。

■まちづくりにつなげる

午後になってから雨が降ってしまったことで、当初予定していたコースを全て歩くことはできなかったものの、さまざまな視点を入れること、異なった要素を加えることでまち歩きの楽しみが二倍、三倍に増えることを実感したと言えます。小田原だけではなく、他の自治体での新たな観光やまちづくりの手法としても参考になるのでは、と思えたツアーでした。

食べ歩きという言葉があるように、食べて歩くことは単純に楽しいもの。その楽しみを広げるためにも、様々な主体が関われる仕組みづくりが必要であり、このことが、まちづくりにつながるのだと実感したツアーでした。まちを味わい深くするには、このような仕掛けも重要ではないでしょうか。

o3
写真上から
・小田原ブイヤベースを作る料理長たち
・日本最古の水道脇を歩く
・ブイヤベースには似合わないような境内の特設席でいただきました。美味いです。
・戦前・戦後と通じて「電力王」と呼ばれた実業家で茶人としても高名であった松永安左ヱ門邸(耳庵)
・かまぼこサンド