市民参加のはしご

「自分たちのまちは自分たちでつくる」冊子での意見交換会では、市民参加の段階がある、どの程度が必要なのかも考えてみるべきという趣旨の発言がありました。この意見が、実は今の武蔵野市の市民参加の今後を考えていく上で非常に重要なポイントなのだと思います。
そこで、少々古いかもしれませんが、アーンスタインの「参加のはしご」で考えてみるべきではと思いました。


市民参加の段階との発言を聞いて思い出したのは、以前、横浜市立大学で公共経営基礎講座(講師;宮脇淳北海道大学公共政策大学院教授・内閣府地方分権改革推進委員会事務局長)というのを受けていたのですが、このなかでNPMとPPP(Public-Private Partnership)についての講義があり、市民参加をどう考えればいいのか。市民参加にはいくつの段階がある講義があり、受講者(ほとんどが自治体の職員)での議論があったからです。

この時に、市民参加は、オリンピックと同じで参加することに意義があるのでいいのだろうか、との課題提起がありました。
参加して問題点を指摘して文句を言うことも必要な時はあるが、参加した責任もある。責任とは、発言したことに責任を持とうとの考え。例えば、駐車違反に文句を言う人が駐車違反をしないことと同じこと。このことを考えるべきだろう、が一定の結論ではあったのですが、この時に考えてみるべきなのがアーンスタインモデルだと講義だったのです。
役所内では、市民参加は大変なことだけになる、との考えが多い。しかし、市民との関係がその事業についてどの程度強いかで市民参加のレベルは考えるべきだろう、との問いかけでした。
アーンスタインモデルとは、1960年代に提唱された米国の社会学者、シェリー・アーンスタインよる「住民参加のはしご」のことで下記が主な内容です(講義資料の抜粋で直訳なので、少々意味が分かり難いのですが)。

1)操作(manipulation)
 行政と住民が協同関係を持つ。何かをやっていることに意義がある。行政が一方的に教育、指示する 住民は参加だけで満足する。

2)治療(therapy)
 住民の無力感、無関心を対象にする社会事業の技術的な接近。清掃運動など何かをきれいにしようなどを展開するが行政の指導に終わることになる。

3)情報提供(informing)
 行政からの一方向だけ。交渉は住民とはない。小冊子の作成、ポスターなど。

4)相談(consulation)
 住民への意思打診。公聴会、打診などのにより情報を提供し参加を誘導する。委員会に参加させる、アンケートなど。行政の得る成果は、住民が参加したという事実であり、要求されるプロセスを得たというだけ。

5)懐柔(placation)
 名目上の参加。相談と同じだが、住民が若干の影響力を行使できる。住民の広範な参加が各種委員会で行われ意見が行われる。しかし、意見の合法性、実行可能性への判断は行政に委ねられている。行政が住民を懐柔するために決定した以外の恩恵を受けない、報告書だけなど。

6)協同関係(partnership)
 行政側が最終的な否決権を持っているが住民が必要と考えれば交渉ができる段階。行政の判断でお蔵入りができない。オープンで議論ができる。住民投票など。議会でも住民意思に逆らえない。

7)権限委任(delegated power)
 アメリカの都市計画などにあり、行政は住民と交渉せざるを得ない(相談ではなく)。計画、執行に強い影響を与える。 
 
8)住民統制(citizen control)
 完全自治(責任を追い、担う)。行政の意思決定、執行に住民が関与する。しかし、機能不全を起こすこともある

市民参加は、1から8へとの段階が上がることになりますが、ひとつずつ上がるのではなく、1から発展させたほうがいいのか。あるいは、この中のいくつかを選択して考えるたほうがいい。ただし、4.5は注意が必要だと講義では話されていました。

一口に市民参加といってもどのレベルを考えるのか。あるいは、どのレベルの市民参加なのか市民も行政も知っておき、実際の運営にあたることも必要です。

武蔵野市の市民参加の機会は飛躍的に増えていますが、行政が市民に何を求め、何を議論して欲しいのか。市民は何を議論をしたくて、何を課題と考えているのか。そして、結論をどう実行にさせるかを、市民、行政とも今後は考えていくべきと思いました。

この議論のなかで、現実的に参加できるのは少数の市民だけになる。良い内容の報告書や計画ができたとしても、実行できるのか。絵に描いた餅にならないか。市民側にも税金を払っているのだから、公共サービスを担う必要はないとの考えになる、との問題提起がありました。

これたいして、3%ルールという考え方がある。全体の3%が変われば、全部が変わるとの考え方で、そのためには、3%が確固たる意思を持つ必要がある。過半数を得るのではなく、3%のネットワークをどう作るかが求めらる、との内容でした。
市川市が1%助成を行っていますが、なぜ1%なのかも考えるべきだ。1%でも、他人との関係を持ってもらうことで市民意識が高まるはずであるし、何らかの成功事例できれば、それが広がるきっかけにもなることも考えるべきだろう、との指摘もありました。

例え少数でも、その波及効果も考えるべきということだと思います。
そこのことを考えれば、市民会議か広がる効果に、もっと期待したいと思います。

一口に市民参加といっても内容は違いますし、市民が求めるもの、行政が考えるものに違いがあります。市民参加とは何か、何のために行うのかなどある程度の整理が市民、行政ともにこれからは必要ではないでしょうか。

【参考】
ItPro 電子自治体ポータル PPP(Public-Private Partnership)