ユニバーサルデザインのまちづくりには見えないデコボコがある

誰にでも住みやすく使いやすいユニバーサルデザインのまちづくりについて、主に条例づくりの観点から、先行事例の話を伺ってきました。
目指す方向は同じでも、いわゆる縦割りの弊害も課題にはあるようです。


話を伺ったのは、黒崎晋司さん(地域計画建築研究所アルパック・主任研究員)。商店街による地域活性化や生涯学習計画など多面的にまちづくりに関わっていらっしゃる方で、本業は都市計画のコンサルタント。お話は、現代都市政策研究会の定例会で伺ってきました。

テーマは、ハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律)と交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)が統合し、バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動円滑化の促進に関する法律)が2006年12月に施行されたことから、各自治体でユニバーサルデザインのまちづくりが今以上に求められているなか、現状と課題。今後の可能性や武蔵野市を始め各地で制定されているまちづくり条例との連携でした。

□条例づくりのポイント

黒崎さんは、コンサルとして、各地の福祉関連の条例づくりやまちづくり条例に携わってきた経験からまちづくりは都市計画だけではだめ。福祉、産業振興、教育から見て行くなどの多面的な切り口も必用だ。そこから地域が作られて行くことになる。

条例を策定する場合には、高齢者と身体障害者などの対象者は同じでも内容が建築物を対象にするハートビル法と旅客施設や駅周辺の施設の利用、移動を対象とする交通バリアフリー法、そして、新バリアフリー法が規定する範囲や内容に留意したうえで、いくつかのポイントがあると話されていました。

全体として言えるのは、どこまでいいのか、だめなのかを明確にすることであり、特に権利義務については重要になり条例でなくては定めることができない(議会の承認が前提)。

法律よりも闇雲に厳しくはできないので、なぜ厳しくするかの根拠が必用になる。その場合、都市計画法などで個別に条例に委任できるように明示されているか。

個別法で委任されていないが、自治立法権に基づいて定めることができるケースもある。この場合、条例としては適法になるが、担保の方法が問題になることがある。

事業者の努力により実現を可能にすることもできる。この場合は事業者との協議が必用となり、インセンティブを働かせることが重要になる。インセンティブには、優れた事業者を賞賛する意味で公表することも考えられ、その場合には賞賛する根拠となる規定や条例が必要になる、などでした。

条例や規則を作るのが目的ではなく、目的を達成するためにどのように設計するかがポイントであり、場合によっては、条例でなくてもいいケースがあるのだと思いました。

また、武蔵野市でも来年4月1日からまちづくり条例が施行されますが、条例で福祉部署からの要望をきめ細かく書き込んでユニーバーサルデザインのまちにするように規制ができますが、法律で本来守る事項とそうではない事項を分け考えておこないと民間事業者にあまりにも負荷をかけ不公平になることや事業ができなくなることなど課題を持つ条例が実際にはあるとの指摘には考えさせられました。

□実際の運営課題

条例を作るときには、実際の運用を想定すること、とも指摘されており、このことは非常に重要だと思いました。

条例を施行したことにより、協議や届出による事務量の増加となることから役所内での調整ができるのか、との指摘なのです。

ある自治体の職員が実際に条例の制定作業を行ったさい、市民参加による意見などの反映もたいへんだが、それ以上のことで庁内調整のエネルギーが膨大だ。市民参加へのエネルギーが10だとすると庁内調整は30~50になる、との“内部事情”を聞いたことがあるからです。

条例となるといくつかの課に影響がでる場合も多いのですが、その場合、担当をどの課にすればいいという調整の方法では、条例の目的を実現することは難しく、いかに関係する課の協力ができ、事務を担えるかを設計しておくことがポイントだとも指摘されていました。

□都条例との関係

このあと、実際例を見ながらどのように条例が設計されているかの参加者と意見交換を行っていったのですが、そのなかで、東京都の条例と区市町村の条例との整合性をどうしているか、との話題がありました。

同じような条例が都と区市町村にあれば、事業者は双方に届け出や調整を行うことになるばかりではなく、都と区市町村での目指すべき姿や規制内容が異なってしまわないかとの課題です。

例えば、東京都には東京都福祉のまちづくり条例があり、世田谷区にも同様の条例があるからです。

世田谷区の場合は、建築確認が都から区に委任されているので、確認審査のときに区の条例にあっているかもやっているのだそうですが、練馬区では、1万平米以上は、都で行うなど自治体によって違うことは課題ではと思いました。

同じように都にも課題があることが分かりました。この福祉のまちづくり条例のの窓口は福祉局になるのですが、新バリアフリー法の窓口は建設局なのだそうです。そのため、二回確認をしなくてはならないため事業者が混乱しているのだそうです。

いわゆる縦割りとも言える状況がこのような場面でもあるということでしょうか。できるだけ申請する窓口を一本化しよう考えている自治体もあるそうですが、内部調整がたいへんだ、との話もあり、ユニーバーサルデザイン室を作ったほうがといいとの意見も出されていました。

また、バリアフリーのための補助金を福祉局が持っていても、建設となると都の建設局の補助金しか目がいかないためか、区市町村からの申請数が少ないとの実例も分かりました。

■課題を整理すると

いくつかの自治体の例もあわせて話を伺ってみると、法の体系や自治体の部署が、目指すべきまちの姿にうまくマッチングしていないとの課題が気になりました。

ユニバーサルデザインとなると、福祉部署の守備範囲となりますが、道路や建物など実際の姿を設計するのは、建設部署の守備範囲となり連携がうまくいかないことが多いのだそうです。

例えば、福祉部署の人は、どうすれば車いすで通行しやすいかが分かりますが、実際の道路や建物の設計ができないことが多く、図面を見てもよく分からない。反対に建築部署の人は図面を描けるが、車いすで実際に何が困るのか、こうしたら良いかが法で規定された以上には分からないことがあるのだそうです。

ユニバーサルデザインのまちづくりは必要であり、進めるべきと思いますが、条例制定での課題、庁内体制などの市民からは遠く見えない課題があることがよく分かったのが、今回の成果かもしれません。

ユニバーサルデザインのまちづくりには、見えないデコボコもあるということでしょう。これをどうするか。庁内だけではなく、条例を制定が本来の仕事でもある議会も考える必要があると思います。

【参考】
東京都福祉のまちづくり事業