コストカットで自治体はダメになる?

知人が「コストダウンが会社をダメにする」という書籍を出版したので拝読させていただきました。

コストカットは、会社でも自治体でも必要ですが、経営戦略を持ち、全体を見ないと逆効果になるというのが内容です。自治体経営にも同じことがいえるかもしれない、と思えた書籍です。



「コストダウンが会社をダメにする―スループット向上で全体最適 」の著者は、本間 峰一さん。みずほ総合研究所のコンサルタントで、収益性改善、業務改革、マーケティングなどを専門分野にされている方です。

詳細は、公式サイトやアマゾンをご参照していただくとして、興味深いのは、本来は企業の業務改善の指南書なのに自治体経営にも通じていることがある点です。

例えば、経営改革を行うには、「現状分析→計画策定→実行→評価」という時系列で考えるべき、としていますが、これは行政評価などの使われるPDCAサイクルと同じ考え方です。

また、目先のコストカットを優先させてしまい、自ら持つ資産(人も含め)を有効活用しないことで、実はコスト増、効率が悪くなっているとの指摘には考えさせられました。

単価の安い部品を外注して商品単体の利益を増やしたとしても、自社で部品が製造できる会社であれば、経常経費のかかる製造部門の受注が減ることになり、結果として会社全体の利益が減ってしまうと書かれているのですが、正社員である公務員を削減し、嘱託職員にすることで目先の人件費を下げたとしても、仕事内容に差があることを考えれば、それで本来の業務がなし得ているのか、と思えてしまうからです。

仮に決定権を持たない非正規職員である嘱託職員と決定権を持つ正規職員が同じ職場にいる場合、決定権を持たない嘱託職員をどう動かすかのマネジメントは、決定権を持つ正規職員が負う行うことになります。

10人の職場で半分の5人を嘱託職員にした場合、それまでは、10人はそれぞれの責任で決定できていたものが、正規の5人が自分だけではなく嘱託職員の5人分も決定しなくてはならなくなります。業務内容をうまく分けることができればいいのでしょうが、正規の負担割合が増えてしまい、結果として業務の効率性が悪くなるとも考えられるからです。

このような現場について、ある自治体職員に聞いた話では、10人の職場で半分を嘱託になったが、頭数で考えるよりもやる気のある正規職員7人でやった方がはるかに効率的だ、と話されていました。

その職場は専門性を必要とするため、基本的に5年までしか雇用ができない嘱託職員ではスキルが身に付かないこと。給料も低いこともありアルバイト感覚で仕事をすることもあり、結果として戦力になり難いというのです。

上記の部品と比較して申し訳ないのですが、公立保育園を民営化すればコストが安くなると考えることありますが、民営化しても保育園の職員はそのまま市の職員としているのですから(簡単に解雇ができないのが公務員)、保育園部門の経費は削減できたとしても、市全体の人件費で考えれば、民営化した分だけの委託費が増え、結果的にはコスト増になることもあります。

一番の問題は、やる気がある職員であるかどうかですが、このことは横に置いて考えるとして、目先のコストカットで、本来やるべき業務ができているのか。会社(自治体)全体として利益になっているのか(質を伴ったサービスができているのか)。
コストカットが、収益性改善、業務改善にほんとうになっているのか、戦略性から考えてみるべきと思った書籍です。

【参考】
公式サイト

アマゾン コストダウンが会社をダメにする―スループット向上で全体最適 (単行本)  本間 峰一 (著)