税金を使わない市民参加型事業

横浜市の風力発電事業「ハマウイング(横浜市風力発電所)」について、話を伺ってきました。
この事業は横浜市の環境施策のシンボルとして横浜港に風力発電装置を設置した事業ですが、建設費に税金を使わない市民参加型事業であるのが特徴です。


風力発電で環境対策と横浜港のシンボルとして風力発電装置を作ろうとの目標で市が実施したものです。実施の主体となったは、横浜市地球温暖化対策事業部ですが、そもそもの企画は、アントレプレナーシップ事業として始まったのだそうです。

この事業は、いわば庁内ベンチャー事業と言える制度です。職員の発想や意欲により、必要性の高い「市民のための事業」を推進することを目標とし、職員が新規事業を提案し許可がおりると予算と人が付けられ事業計画を作成。計画が審査をとうれば、提案した職員自ら事業を実施するとの制度です。

風力発電としたのは、グリーン電力であり環境政策とし意味があること、グリーン電力を進めるとの意味から助成金制度が充実していることが大きな理由で、港に作るのため、風が常に吹いているとの場所の特性もあったとしていました。

風力発電装置は、現在では完成していますが、この装置で860世帯分の電力を生み出すことができ、4500本の樹木が吸収するCO2を吸収できる量になっているとしていました。

建設費は、約5億円。グリーン電力を進めるためにNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から約2億円の助成金を得られることになったため、残りを自己財源で確保する必要がありました。

通常は自治体が出してしまうことが多いと思いますが、この事業の特徴となっているのが住民参加型市場公募債と「Y(ヨコハマ)-グリーンパートナー」と呼ばれる企業からの協賛金でまかなってしまったことです。

いってしまえば、市と市民、企業のコラボであり、横浜市長の言葉を借りれば、最小のコストで最大の効果を生み出す事業ということになるのだそうです。

住民参加型市場公募債は、地域住民を対象に自治体が発行できる公募債で18年から始まった制度で年限・利率などの発行条件は、自治体が独自に設定ができます。住民に資金を提供してもらい、後に発電で得られた電気を売電することで得られる収入から返済していくとのシステムです。

利率は、国債に比べると低いのですが、風車の基礎に資金を出したもらった人の名前を刻むことで関心を持ってもらうこと、自分たちのまちのために環境に良いことをやるとのイメージを作り、住民に呼びかけたのだそうです。
その結果、三日間で完売となってしまったとしていました。

企業についても、グリーンエネルギーに協力しているイメージアップだけではなく、横浜のあの風力発電に協賛しているアピールができるので、横浜の住民向けによりアピールができるメリットもあることから横浜市の企業が協賛してくれたと話されていました。

この住民参加型市場公募債と企業協賛金、それと助成金で建設費を捻出し市税の負担なしで実施できたのがこの風力発電事業ということになります。

助成金もあり市民も関心があるのであれば、市がやらなくてもいいのでは、との疑問が出てくると思います。

しかし、民間で実施すると助成金の割合が低くなるのだそうで、市の事業(公の事業)とであれば、より助成金を得られるメリットがあること。
市民参加の事業、市民とともに取り組める事業としても有効と判断して事業を行ったのだそうです。

このことを考えれば、行政がやることの新たな意味もある事業と言えそうです。

■この事業を担当していた職員は、金がない、人が足りないとの声を聞くが隙間やアイデアでできる事例ではないか、と話されていました。

また、グリーン電力が話題になる時期を見ていたこと、電力自由化の法改正(売電ができる)こと、市民公募債もできるようになったことなど世の中の動きにアンテナを張っていたことがこの事業の背景にはあり、役人らしくない事業とも言われているのだそうです。 

財政状況が右肩上がりにはならないこれからの社会状況を考えれば、事業を実施するさいに事業費はいくらか、補助金はいくらかという支出する額を考えるだけでなく、税収以外にどれだけ収入を得られるか、お金をかけなくでも実施できるないのかを考える発想の柔軟さが必要になると思います。
その意味では、税金を建設費に使わなかった横浜市の風力発電事業は良い事例だと思います。

この事業は、今となれば成功事例となっていますが、企業へ協賛金をお願いしにいく“営業努力”が必要だったこと。何よりも執行部から企画のGOサインをもらうプレゼンテーションの能力が必要であったことなど、通常の市役所業務以外の能力も必要だったようです。しかし、それが新たな刺激となり職員のやる気にもなったのだそうです。

横浜市のアントレプレナーシップ事業の目的には、職員の意識改革や組織の活性化もあるとのこと。武蔵野市とは市役所の規模が違いすぎますが、同じようなシステムも考えてもいいのではと思いました。

また、自らお金を出して、事業を支援する、成果を楽しむという市民参加手法も考えても良いはず、と思います。

【参考】
横浜市地球温暖化対策事業本部 ハマウイング
横浜市 アントレプレナーシップ事業
NEDO