市民を超えた議員はいない

自治体議会は、たぬき御殿か伏魔殿。そんな議会でも、市民が熟成されていないから助かっている。議会は、おらが村の代表ではない。地域課題を解決するのが本来の議会であり、そのような議会へと改革をするために、議会基本条例制定の先頭に立っていた伊賀市議会の前議長、安本美栄子さんの話を伺いました。


安本さんは、2月20日に開催された「NPOと行政の対話フォーラム」の分科会「NPOとともに地域課題を解決する議会(議員)とは」のパネラーとして参加されており、現状の議会についての発言は、この分科会のなかでのことでした。

NPOだけではなく市民との協働や連携は、行政でも簡単には進んでいないが実情だと思います。分科会のテーマとなっていた「議会と」になると、それどころではないのでは、と思えます。

分科会では、新潟県上越市で行われている議員を対象にしたNPOを紹介するツアーを行っているくびき野NPOサポートセンターからの報告もありましたが、NPOがどいうものかの理解が進んだ程度で、地域課題を解決するまでにはなっていないことが分かりました。だからこそ、“対話”が必要ということなのだと思いますが、この事例だけではなく、NPOの積極性に比べて議会側が追いついていない、理解していない、しようともしていないのでは、と思えています。

分科会の内容は興味深いものでしたが、そのことよりも、伊賀市議会の議会基本条例のほうがより印象的で、武蔵野市議会にも必要だと思いました。伊賀市議会の議会基本条例については、昨年の「市民と議員の条例づくり会議」でも話を伺っていましたが、市民との接点、協働などをテーマとする今回の分科会のほうが、より条例の意味合いが分かったように思えています。

伊賀市議会が自ら策定した議会基本条例については、伊賀市議会の議会基本条例のページをご参照下さい。
条例の特徴としては、下記が上げられています。

 1.市民との意見交換の場である「議会報告会」の設置

 2.市民に分かりやすい議会議論並びに審議論点の明確化のため「一問一答方式の導入」と「行政への反問権の付与」

 3.政策の公正、透明性の確保と議会審議での論点情報の形成のため、行政に対し「情報の発生源など7項目」の提出を求める

 4.二元代表制の一翼を担う議会としての共通認識の醸成を図るなどの「政策討論会」の設置

 5.常任、特別委員会などの活動の一環として「出前講座」の設置

 6.議案に対する「議員の対応」の公表

 7.議員の定数、報酬の改正は、議会自ら説明責任を果たすため「議員提案」を行う

また、条例の全文には、

『議会は市民の意思を代弁する合議制機関であることから、自らの創意と工夫によって市民との協調のもと、伊賀のまちづくりを推進していく必要がある。議会の公正性・透明性を確保することにより、市民に開かれた議会、市民参加を推進する議会を目指して、活動を行うあるべき姿をここに定めるものである』

と書かれています。
 
 
私が理解するには、市民に分かりやすく説明ができ、情報提供を行い市民と議論をすること。議会を政策提案型へと変え、その課程も公開していく議会へと改革するための条例だと思います。
逆説的に言えば、そのような議会ではなかったのかもしれません。さらに言えば、このような条例を持たない議会は、政策提案型ではなく、市民とは議論ができていない議会ということになるのかもしれません。
 
 
この条例ができたことで何が変わったかといえば、報告会によって、議員が勉強するようになったのだそうです。
 
報告会で市民からどう質問が来るか分からないこと。自分の意見だけではなく、議会の立場で答えなくてはならないという説明責任があるからなのだそうです。

そして、市民の願いを全てかなえると財源が必要なり、全てはできない。だから、選択が必要になり、議会がどう選択したのか説明しなくはならない。今までは行政の責任にしてきたが、議会としてどう政策判断したのかを考えるようになったのだそうです。
 
市民も意識が変わり、行政と議会の違いが分かるようになった。議員と言えば、村の代表であり、地縁血縁で選んでいたが、議会で何をしているかだけでなく、どういう議員かも知らないで選んでいた。それで、議会がダメだと考えていた。市民がしっかりとした議員を選ばないと議会もよくならないことに気が付いたのだそうです。

市民も議員も同じで、行政に対して、道路や建物がどうした。老人施設はどうしたという陳情型、おねだり型が幅を利かせてはいないでしょうか。限られた財源をどう効率的に使うのか、優先度をどうするか。いるのかいらないのか。あるいは、民間でやる、市民と協働するなどの選手法を考えることなど政策形成が重要になっているのが今の時代だと思います。だからこそ、議会、議員が変わる必要があるはずです。 
 
自治体議会を改革する大きな武器が議会基本条例なのかもしれません。
 
条例があれば全てが変わるのではありませんが、条例というツールがあれば、変わる可能性は高いと思います。

しかし、どこでも同じで抵抗勢力が多いのが実情です。伊賀市議会の場合も、価値観が違う議員がいるので時間がかかったとしていました。改革は、信念を持った議員が半分以上いるか、何かの不祥事がないと進まない、という話もありました。

政策を議論できる、公開する、市民と議論する議会にするには、議員が当然ながら行うにしても、そういう議員が選ばれなくてはなりません。安本さんの「市民を超えた議員はいない」という言葉が最も印象的な分科会でした。

私は所属していませんが、武蔵野市議会の議会運営委員会が議会基本条例のことで視察に訪れていますので、何らかの動きがあればいいな、と思います。

議会基本条例。
武蔵野市議会だけでなく全国の自治体議会の存在意義が問われる条例かもしれません。