新タイプの民間学童キッズベースキャンプ 公設との違いは

kids base 1 世田谷区にある学童保育の機能を備えた民間のアフタースクール「キッズベースキャンプ」を視察してきました。授業終了後、最大22時まで(夏休みなどは、8時30分~19時)預けることが可能で、学校と家への送迎、夕食もあるという内容です。週五日使う場合の基本料金は、月額4万2000円。公設公営の学童保育から考えれば高額な料金ですが、既存の学童保育とはどう違うのかを伺ってきました。


 放課後などに保護者が仕事などで家庭にいない子どもを預かる、保育するのが学童保育の一般的な定義になると思いますが、キッズベースキャンプは、学童保育の機能を備えた民間のアフタースクール、としており、一般的な学童保育では行えないようなサービスを提供しています。

   ◆◇主な特徴◆◇

 主な特徴を下記にまとめてみました。詳細は、キッズベースキャンプのサイトをご参照下さい。

kids basemaru・送迎サービスとセキュリティ
 スタッフが学校、塾へお迎えに行き、自宅の保護者の元までの送りを専用の車を使いおこなうもの。店舗(キッズベースキャンプの施設)は専用のICカードで入室し、カードを利用すると記録が行われ、保護者の携帯電話などに連絡がいくシステムもあります。

・多様なプログラム
 礼儀・道徳・生活習慣
 学習習慣と知的好奇心
 自由な遊びや生活の中で培う判断力・と危険回避能力
 異学年、他校児童との交流による豊かなコミュニケーション力
 小さな自信の積み重ねによる自発・自立の精神
 
 を実施しているとのこと。
 宿題や遊びの時間があり、子どもたちが一緒に取り組むことや宿題などで分からない時には、指導員にあたるキッズコーチが相談にのることも行っています。
 
・医療・食育サポート
 周辺の医療機関と提携し、急な病気や怪我のときにはキッズコーチが付き添い受診できる体制や食育イベント、健康・食育関連などのセミナーを開催。
 
・多様な利用方法
 保護者の就業の有無は問わない。
 施設のから一定の距離の学校が対象で、公立、市立を問わない。
 小学校1年生~6年生が対象
 最大22時まで利用可能
 週一日だけ、会員になれば必要な時間だけの利用も可能
 夕食、昼食が利用できる(別料金)

 学童保育事業は、児童福祉法に基づく事業であるため誰でもが利用することができません。保護者が仕事を持つなど家庭にいない(監護にかける)子どもが対象となりますが、キッズベースキャンプでは、利用するにあたってのハードルはありません。
 
 
○利用可能日、料金

 利用できるのは、月曜日から金曜日までと夏休みや冬休みなどの学校の長期休業日。臨時休校などへも対応しています。

 料金は、レギュラー会員と呼ばれる週1日から5日まで定期的に利用する会員と必要な時にだけ利用するスポット会員とに分けられています。
レギュラー会員の場合、週一日が月額1万1550円~週5日が月額4万2000円。夏休み(8月)は、週1日が月額1万3650円、5日が月額7万3500円。他に入会金が2万1000円。

 スポット会員は、8時30分~13時までの利用が一回、3675円。13時~19時の午後が一回3675円。17時~21時の夜が一回3150円。入会金が1万500円となっています。
となっています。

 時間を延長する場合は、30分ごとに630円が加算。他に夕食、昼食を一食630円で利用することも可能です。
 イベントが随時ありますが、内容によって実費が必要になる場合があります。

kids base 2○定員と設備
 定員は20~30名。現在6カ所にありますが、標準的な広さは約83㎡~100㎡(25坪~30坪)。施設内には、専用の学習スペース、男女別トイレ、着替えスペース、足を洗える洗い場、オープンキッチンなど。ランドセル置き場や事務スペースなどもあります。
 
 視察した時は、ちょうど学校から戻ってきていた時間で宿題を一斉にした後は、フロアでキッズコーチと一緒になって遊んでいました。低学年の子どもしかいませんでしたが、高学年の子どもは、専用の車(送迎に使う)を使って近所の公園へ遊びにいっているとのこと。周辺が住宅街で大きな道路もあることから、近所で外遊びをすることができませんので、車を上手に活用しているように思えます。雨の日には図書館などにも行くのだそうです。

 
 
○スタッフ
 資格要件にはしていないが、保育士、幼稚園教諭の資格、経験を持つキッズコーチがほとんど。採用にあたっては、コミュニケーション能力や責任感などの人間性を重視しているとのこと。外部での実地研修や座学研修、内部での実地研修などを実施。今後も充実していく計画。
 コーチ一人あたりの子どもの数は、最大で15人の最低基準があり、通常は、10名以内を適正としています

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   ◆◇なぜできたのか◆◇
    
 キッズベースキャンプができた背景には、子どものセキュリティへの関心が高いことがあると思います。一般的な学童保育では、学校から学童、学童から自宅までは子どもだけで移動することになります。武蔵野市の場合は、18時が終了ですから冬などは日が暮れた時間帯に帰宅することになりますので、専用の車を使い保護者に直接会い子どもを引き渡すサービスには、子どもの安全を考えればメリットになるはずです。

 最大22時まで利用可能というのも、数は多くはないものの必要とする家庭が多いことを考えればニーズがあると思います。18時までに家に帰ることができれば良いのですが、そう簡単に仕事の融通は利きません。学童の終了時間以降はシッターさんに頼む家庭があることを考えれば、料金は加算されたとしても同じ場所にいることができることはメリットになるのだと思います。

 また、店舗に入退出にはICカードを玄関ドアにタッチする必要があり、タッチすることで店舗のコンピュータに記録され、さらに保護者の携帯電話などに何時、どこを通過したという情報が伝わるシステムともなっていました。

   ◆◇学童保育との違い◆◇

 学童保育であって学童保育ではないのがキッズベースキャンプですが、一般的な学童とどこに違いがあるのでしょうか。

 視察して思えたのは、子どもたちが「ただいま!」と店舗にやってくるのは、第二の家庭としての学童と同じ意味を持つ場所という点で同じだと思いました。

 コーチは、それぞれにあだ名があり一緒になって遊ぶ姿も本来の学童と同じだと思います。学童の指導員は先生ではなく、保護者でもありません。どちらの要素も持ち、なおかつ遊び仲間でもあるという複雑な仕事内容を考えれば、先生と呼ばせてしまうことで、主従の関係を作ってしまい、家庭としての機能を失わせることがありますので、「ただいま」とあだ名には非常に好感を持てました。

 イベントはひな祭りやお菓子づくり、農園体験、キックベースボール大会などで一般的な学童であればおこなれている内容です。ゴミ拾いをしながら周辺の商店街の様子を見に行く「キッズパトロール」というイベントもありますが、現在の一般的な学童でもやろうと思えば可能だと思いました。逆に、あえてやらない、やりたくない、やらせないという学童があれば、そのほうが問題だと思います。

 生協の食材を使うなど食材に配慮した夕食もありますが、22時までとなれば当然のことでしょう。

 専用の図書コーナーがあったり、簡単な英語を教えるなど学童では行われないこともありますが、最も大きな差は、セキュリティとコーチではと思えました。

 セキュリティは前記のとうりですが、コーチ一人あたりの子どもの数を10名以内に考えていることは、武蔵野市の場合では20名に一人に比べても良い基準と言えるでしょう。

 また、採用にあたっては、保育のスキルだけでなく、コミュニケーション力や責任感など人間性を重視していることは非常に好感を覚えました。

 採用後も全員を対象とした研修プログラムがあり、数週間の研修を実施しています。指導員のミッションとして、社会性や人間力教育を行うという理念があり自らが高いモラルを持ってサービスにあたることが示されているのも良いと思いました。子どもと関わる事業で最も大切なのが人材であることが分かっていると思えました。コーチの実際の給料は分かりませんでしたが、他と比べても劣らないと説明されています。

 保育ではなく教育、サービスという言葉には引っかかりがありますが、理念がないことには何を目指しているのか分からなくなりますので明確にしていることは、公設学童などでも必要なことだと思います。

kids base3   ◇◆父母会と公設の役目◇◆
   
 視察してみて思ったのは、料金が高額なことを省けば、今から私の子どもが小学校に行くのであれば、選択肢になり得ると思いました。サービス内容、事業内容を比べると魅力的に思えるからです。

 ですが、父母会がありません。
 というよりもサービスですから、必要がないのだと思います。この点が大きな違いであり、公設学童が持つ意味にもなる、と思えました。

 保育園や学童保育は、本来は保護者が仕事などで家庭にいることができない。だから、家庭の代わりを作ろうと自ら作り出したのが原点です。
 行政がサービスとして提供しているから利用するのではなく、必要と考えた人が、どのような内容が必要なのかを考えて利用する、作り出すのが本来です。

 ですので、保育内容を考えるため、そのために保護者の横のつながりを作る父母会は保育には必要不可欠であるはずです。そして、そのつながりが子どもの成長とともにコミュニティーとなり、地域へとつながっていくのではないでしょうか。

 また、障がい児への対応も基本的にはできません。行政からの補助金もない民間事業ですから致し方がないのでしょう。

 これらのことを考えると、公設学童は何をすべきかとなってきます。

 たんなる場所を貸している、安全に預かっているだけでは、時間の幅があり、子どもが楽しく時間を過ごせることを考えるとキッズベースキャンプに魅力的な要素が多いと思えます。
 
 年功序列で仕事内容への評定がないような公設学童の場合、仕事をしてもしなくても給料は同じ。子どもが来ない方が楽で良いと指導員が考えてしまう可能性がありますが、そのような学童と比較すると、子どもが来たくなるようにコーチのスキルを重視し研修も続けていることは、大きな違いになり得ると思います。
 ニーズを調査し対応しようと努力をしていくことは、子ども(顧客)が来ないことにはビジネスになりませんから、キッズベースキャンプが必死になるのは当たり前のことです。
  
 もっとも、しっかりとした保育を行っている学童であれば、同じことをしているはずですから、差にはなりません。差があるとなると、その学童自体に問題がることになります。

 しかし、父母会を通じた地域コミュニティを作ることやプラスアルファのスタッフ雇用が必要となる障がい児への対応は、公設、あるいは公が関与する学童でないとできない対応できないはずです。

 コミュニティ、地域づくりへの仕掛けは行政の大きな仕事であるべきで、そのためにコスト計算ではできない内容、ミッションを持てるのか。持つ事業にできるかが公設や公が関与する事業に求められる、と思いました。
 また、学童保育は福祉事業ですから、経済的弱者への対応も必要になります。いろいろなことに全て対応するに、コストも含め公には限界もあります。

 子どもが楽しく、心地よく時間を安全に過ごせる事業目的であれば、キッズベースキャンプのような民間企業にはかなわないでしょう。夜間までどうしても必要だなど個別の対応は民間にまかせて、コストだけではできないことを公設、あるいは公が関与する事業として行うなど、民間と公の棲み分けが必要になるとも思いました。

 ◇◆今後の事業展開と公設の意味◇◆
 
 キッズベースキャンプの今後の事業展開についても聞いてみました。

 週5日利用して月額4万2000円ですが、この費用だけで会社としての利益を出すことは困難ではと思えるためです。

 武蔵野市の学童の場合、子ども一人あたりの事業コストは月額約2万5000円です(補助金や育成料の収入別)が、施設の土地購入費や将来の修繕費、訴訟対策や将来の事業展開への費用、株主への配当など会社としての収益が算定されていませんので実質的には、現状では大きな収益が出ているとは思えません。コーチの昇級を考えれば、新たな事業展開、収益増をとなる構造を考える必要があるはずです。

 返答は、やはり現状ではそのとおり。しかし、今後の事業展開として、セキュリティシステムを他の業務へ展開できること。コーチへの研修システムが、自治体などの児童担当職員や学童指導員へのプログラムとしても活用できることから、研修の受託などの事業展開が考えられている、応対してくださった本社の担当者(ベンチャー企業)は話されていました。

 確かに、自治体が子どもへの予算を削ることや研修に注目しないことで職員のスキルが下がることが懸念されます。一度下がれば、自ら上げることが難しいことですから外部の、それもシステム化された民間プログラムの利用を考えるのは当然のことでしょう。

 公設の実情を知り、さらに先を考えている事業とも思えてしまいます。セキュリティシステムには、すでに問いあわせがあるとのことでした。ハードだけでなく、そのソフトに注目していることは重要なポイントだと思います。

 キッズベースキャンプがある地域は、世田谷区の桜新町(視察先)、三軒茶屋、二子玉川。大田区東雪谷。江東区東雲。川崎市宮前区宮前平の六ヶ所。教育への関心度が高く、街の安全に不安がある。高所得者層が多く住む地域と言えるかもしれません。世田谷区は、全小学校に学童保育施設がもともとなく、全児童対策事業のBOPや学童機能を併合した新BOPが実施されており、夜遅くまで預けることが可能で、子どもが楽しみに通える施設が必要な地域でもあったのではとも思います。

 今後の進出先として吉祥寺も検討しているとのこと。進出となった場合、保護者は、どちらを選ぶことになるのでしょうか。公設学童の意味が問われることになるかもしれません。

写真;上から

外観。デザイナーズマンションの一階にある。マンションの建設時から想定して建設されている。

玄関。中に入るには、ICカードをセンサー(下部の○)にタッチしないと入れない。同時に外部のカメラ(上部の○)でもチェックされている。ICカードは連絡帳と一緒になっている

内部 右が玄関。カウンターの奥がスタッフの事務スペース。左奥がキッチンスペース。夕食や昼食がここで作られ(温めるなど簡易調理のみ)、料理イベントなども行われる。

内部 玄関と反対側。左にランドセルのロッカーがあり、奥の壁の裏側が着替えスペース。フロアでは、野球をしていた。階段の上が勉強スペース。

壁には、このような張り紙もあり簡単な英語を教えてくれる。