子育て支援事業の戦略

46ab87c5.jpg下北沢(世田谷区)にあるコミュニティカフェ「ぶりっじ」を訪れてきました。「ぶりっじ」は、子育てにやさしいコミュニティづくりのための拠点として、行政(世田谷区)と商店街、そして、運営にあたっているNPO「せたがや子育てネット」とのコラボレーションで実施されている事業です。

子育て支援が、まちの活性化、市民を元気にすることになる好例だと思いました。そして、子育て支援事業を行うだけではなく、次の段階へと昇華させていく戦略が行政にも必要になっている。特に武蔵野市では、最も重要になるはず、と思いました。


■駅近くの商店街にあるメリット

「ぶりっじ」は、2006年にオープン。講座や勉強会などが開催できる多目的スペースと一時預かりができるスペースにお茶を入れたり料理ができたりできるコミュニティキッチンと事務スペースで構成されています。
講座や勉強会は、住民が実施することもでき、保育も同時に実施できるようになっており、自主活動を支援する機能も持っています。

事業の中心の一つは、『子育てサロンぶりっじ』事業。未園児の子どもと保護者がおしゃベリをしながら地域の情報収集を行うもので毎週火曜日に実施しています。他の時間にも講座や勉強会が行われており、ランチを食べることもできます。出かけていけば何かに出会える、との雰囲気になっていました。

ポイントと思えるのは、この施設が商店街にあることです。普段はあまり顔を見せないような子育て中の親が訪れることで商店の品揃えが変わったり、子どもや親に声をかけることで、商店街と親とのコミュニケーションが生まれたりと商店街に新たな風が吹き込まれていることでした。

親にとっても、駅に近いことで交通の便がいいこと。買い物ついでに寄ることができるなどメリットがあります。駅から遠い場所にあると車に頼ることになり、気軽に行くことがなかなかできません。小さな施設ですが、こういう場所にあることのほうが、子育て支援施設としては有意義ではないでしょうか。

■中間支援NPO

「ぶりっじ」を運営しているのはNPO「せたがや子育てネット」です。2001年から活動が開始され、いろいろな地域にある子育てグループをつなげることや交流の場所づくり、子育て情報の制作や発信や「ぶりっじ」など行政からの事業委託を行っています。子育て支援を行うNPOは数多くありますが、そのようなNPOやグループ同士の支援や情報交換、あるいは、行政との橋渡しを行うなど、いわば、子育て支援グループへの中間支援組織と言えるでしょう。
また、「世田谷区産業振興公社」との協働事業として女性の創業支援プロジェクトも行っています。

このような形態の組織は、今の武蔵野市にはないと思います。各種の子育て支援事業や組織はありますが、その後の展開が見られないのです。
事業を行った後や施設を作った後をどうするのか。行政としてのビジョンがないことが理由ではないえしょうか。

「ぶりっじ」を見て思うのでは、施設規模は小さくても良いから、交通の便利な場所、商店街などとつながりを持ているような場所にあえて作る。そして、そこに集まる市民を元気にして、次の市民へとつなげていく。仲間づくりにもなり、それが子育ての不安を少なくしていく、地域とつながっていくという戦略を持つことが重要だと思えるのです。

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■子育て支援の戦略

びーのびーの」も同様でしたが、人を引きつけ、一緒に事業を担っていく人材を生み出していくことを重要視していると「ぶりっじ」を見ていて思いました。事業を行うだけでなく、そこから人材が広がっていくこと。市民が元気になり、地域とつながっていく。そのような総合的な戦略を持った子育て支援が必要だと思います。

武蔵野市の実情を私が見る限りでは、行政主体の事業はあるものの、市民が主体となっている子育てグループや事業が少ないように思います(具体的な数値データはなく推測です)。本来であれば、グループが数多く生まれ活動していくことで、中間支援的な組織の必要性が高まり、自然発生していくものですが、現状では、そこまでの段階にはなっていないと思えます。
自然発生を待つのも一つの手段かもしれませんが、今のこの時でも子育て中の親は多数いるのですから、待っているだけではすまされないはずです。

となると、行政からなんらかの仕掛け作り、アプローチが必要ではないでしょうか。

「びーのびーの」が多くの人材を生み出したきっかけには、平成13年に実施された「よこはま1万人子育てフォーラム」があります。
これは、子育て支援の団体や個人が集まり、子育てに必要なこと、欲しいことを市民から集め「一万人子育て提言」を行い、このデータから横浜市の子育て施策を考えていったという仕掛けがあったからです。

市民にとっても、このプロジェクトで子育て環境が十分ではないこと、声に出すことで行政が応え変わっていくことに気がつき、行動する市民を生み出すきっかけとなっていたからです。そのような市民が「びーのびーの」などと結びつき、市民が元気になっていたという背景もあったからです。

子育て支援事業、アンケートも含めてですが、単一の事業ではなく、その先を見据えた戦略が必要です。市民が担うべきですが、現状では難しいとなれば、市も関与して(主体ではなく、市民のパートナーとして)組織を作る必要性が武蔵野市にはあるはずです。
そのことが、子育て支援の充実となり、子育てしやすいまちとなり、少子化対策にもつながる、と思います。

写真;
上 ぶりっじの外観。商店街事務所の二階にある。階段しかないので、ベビーカーにはバリアだが、運んでもらうことを誰かに頼む、頼まれることで会話が生まれるきっかけにもなっている。近所の商店の人が手伝ってくれるときもある。
下 多目的スペース。奥に保育ができるスペースがあり、一時保育もある。適度な狭さが、人同士を親密にしていく仕掛けになっているように思えた。キッチンもありお茶や料理もできる。せたがや子育てネットが作成する子育て支援マップの編集作業なども行われる。