人も育てる子育て支援NPO「びーのびーの」

武蔵野市の特徴的な事業と施設である「0123」をモデルとして誕生したNPO、「びーのびーの」が運営している地域子育て支援拠点「どろっぷ」を横浜市で視察してきました。コンセプトは、「0123」と同じですが、その後の発展が異なっており、“本家”も見習う必要があります。


■コンセプトは0123と同じ。その後の展開が違う

「どろっぷ」を運営しているのは、気軽に行ける場所がないと横浜市に住む乳幼児とその母親が悩んでいたとき、「0123」のニュースを聞き、実際に訪れて自分たちのまちにも同じような施設が欲しいと考えて始まったNPO「びーのびーの」です。

今では、2000年に最初に始めた「おやこの広場びーのびーの 菊名ひろば」に加え、05年にオープンした地域子育て支援拠点「どろっぷ」(視察先)と06年にオープンした預かり保育事業を行う「ゆーのびーの」の3施設を運営。

この他に委託事業として、子育て応援マップ「ココマップ」、文部科学省『学びあい・支えあい』地域活性化推進事業・横浜市地域教育推進協議会委託事業、子育て関連情報誌の制作・販売、協働事業提案制度モデル事業、「学生によるわくわく子育てサポーター事業」の4事業を行っています。

子育て支援だけではなく、「ゆーのびーの」では、週3日程度4時間程度子どもを預かるグループ保育と一時預かり保育事業に加え、高齢者のデイケア事業(NPOではなく企業として)も行うなど多角的な展開も行っています。また、商店街との連携をはかるため、商店街の会員として加盟し時間外に施設のスペース貸し出しや商店街イベントへの参加なども行っています。

drop1■原動力

事業の内容や施設については、「びーのびーの」のサイトをご参照いただくとして、担当の方にお話を伺うと、施設のコンセプトは「0123」と同じでもその後の展開が違っていることに驚かされました。

まずスタートですが、行政に頼らず、自分たちで場所を探し資金を工面し仲間を集めて始めてしまっていたのです。

これは、もともと行政のことを知らず、パイプもなかったことから支援をしてくれるとは思っていなかったために、自分たちで空き店舗を探し、集える場所を作り始めてしまったと話されていました。

行政は、子育ての広場が始まったとのニュースを聞いて始めて知ったほど。その後には現在のように事業を委託されるなどの関係となっていますが、行政主導で行われたのではなく、必要だと考えた母親たちの事業を行政から後から支援したのも0123のケースとは異なっています。

スタートだけではなく、その後の多角的な事業展開へとつながった原動力は何でしょうか。

話を伺っていくと、「0123」を見たときに、「働いていなくても社会的に応援してくれると思った」ことではないかと思いました。

このような施設があることで、「いつでも安心して過ごせる場所(もう一つの家と表現されていました)がある」。そこに「仲間がいるから子育てができる」、との思いへとつながり、「子どもがいてもできること」、「小さくてもこのような場所を広げたい」と子育てをポジティブに考え、さらにこの良さをより多くの人にも伝えたい、必要との行動に結びつき、新たな施設や事業へと広がっていった、のだと思いました。

今では、これらの事業のノウハウからスタッフが国や市の審議会などに委員として委嘱も受けるようになっています(内閣府「少子化と男女共同参画に関する専門調査会」、内閣府「少子化社会対策推進会議」など)。この「びーのびーの」をモデルに国の「ひろば事業などが始まったほどとなっています。

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■人材の重要性

「びーのびーの」が活性化しているポイントは、人ではないかと思いました。

ひとつは、かかわっている多くの人がいることです。
金銭関係ではなく、気分良く手伝ってくれる人を広げていくことで、手伝う人の居場所になり仲間となっていく。仲間ができること、増えることで子育ての不安が少なくなり、親もしていく。
さらに言えば、その人たちが、次の親を育てることにつなげていく、人と人をつなげられる人材が育てられているということだと思います。

現在のスタッフは、 約60名。シニア・親子ボランティア登録が約40名。学生ボランティア登録が約100名で、子育て中の保護者ばかりでは活動に限界があると考え、企業退職者や子育てを一段落した人、専門家、学生などからも協力を得て運営にあたっていると話されていました。

施設運営は、注意していないと特定グループのモノになり新たな人を排除してしまうことがあります。また、荷が重過ぎる内容をボランティアとして求め、結果として来なくなってしまうケースも考えられます。
場所があって親がいればいいだけでなく、来ている人が次にも来たくなるとの仕掛けでけでなく、来ている人と人をどう上手くつなげていくか、押し付けではなく、ソフトに人間関係を広げるていける人材がいることで、実はこのような事業が活性化になるのだと思います。また、そのような人材を次の世代へとつなげていくことも重要です。

「びーのびーの」がしているのかを聞いてみると、例えば、何かの講座の時にテーブルを片づけるなどの簡単にできる手伝いをしてもらうことで、“仲間”になるように考えている、と話されていました。

子育てをしていてもできることを考え、負担にならないように、だんだん一緒になっていこう、との仕掛けを作っているわけです。その結果が、多くの人がかかわっていることにつながっているのだと思いました。

また、スタッフには毎週、研修が行われており、子ども学や人間発達学などの専門家がNPOのアドバイザーとなっています。実際の子育て技術だけでなく、理念や情報などさまざまな知識が得られるようにも考えられていました。人を育てることを重視していること。人を重視している姿勢にも驚かされました。

■言語が違う

「びーのびーの」の事業のひとつに、子育て関連情報誌やチラシの制作・販売があります。これは、幼稚園や保育園のことなど子育て施設の情報がまったく分からなかったこと。新住民が多いことから引越してきても生活情報が分からない、地域に密着した情報が欲しいとの母親たちの経験から、始まった事業です(これも行政が後追い)。

子育て中でないと分からないことや身近な情報を提供することは簡単にできることから、このような冊子やチラシの編集作業で仲間を作り出していくことは、今となっては定番の事業です。ですが、一味が違っていました。
それは、「38歳以上の人はチラシを作ってはいけない」ということでした。理由は、「言葉が違うから」なのです。

確かに世代がある程度離れると感覚が違ってきますし、言葉も流行への感覚も変わってきます。子育て中であれば、大方は同じ世代ですから、その仲間を広げるという目的からすれば、同じ感覚、言葉の人が集まったほうがいいのでしょう。

昔からこうやっているから、私たちはこうやっていた、と居残った先輩が発言し、世代間の戦いのように思えてしまうケースもありますから、ある程度かかわったら、次の世代へとバトンを渡してしまうという思い切りの良さも重要なのだと思いました。

■地域と子育て

いろいろな人が子育てかかわる。それが、子育て不安を少なくすることにつながる。昔は、互助機能も含め、地域が持っていたけれど、今は、ほとんどなくなっている。特に新しいまちにはなく、密室育児になりがちで負担は母親に集中している。そのことが、親や子どもの様々な問題につながっているのではないか。親子が密室育児にならないよう、共に学び育ち合う場を提供するために、このような施設が必要、との話も伺いました。

つまり、親が子育てをきっかけに育ち合うことで、親同士がつながり、将来の地域へとつながっていくことになる、と思えるのです。

私のことを考えても、子育てにかかわることで、他の親とも知り合いになり、飲み仲間が増え、地域にもつながっているように思えてなりません。

親を育て、学び結び付けていく。子育て支援事業は、その場に来る人だけで完結するのでなく、このような仕掛け持つことが必要ではないでしょうか。子育て支援は、地域づくりにもつながるはず。その最もお手本になるのが「びーのびーの」だと思いました。

施設規模は、0123とは比較にならない小さな施設ですが、人の広がりは、比較にならないほど大きく広がっています。同じことは、0123にもできるはずです。

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上 手前が幼児スペース、奥に乳児スペースがある。二階に研修スペースもある。
下 入り口近くにコーヒーやお茶が飲めるスペースがあり親も休める工夫がある。