社会に役立つ図書館

武蔵野プレイス(仮称)が実施設計の段階となり、図書館を中心とした新たな複合施設がより現実的となってきています。
しかし、そこで考えておかなくてはならないが、図書館とは何か、ということです。
図書館単独施設ではありませんが、中心とするのですから、そもそもその図書館が何を目指しているのか、単なる無料の貸し本屋、暇つぶしの場所でいいのか、今だからこそ考えておく必要があるはずです

そこで、参考にすべきと思ったのが、1995年にアメリカ図書館協会が示した「アメリカ社会に役立つ図書館の12か条」です。


図書館は知る機会を提供します。
図書館は社会の壁を打ち破ります。
図書館は社会の不公平を改める地ならしをします。
図書館は個人の価値を尊重します。
図書館は創造性を育てます。
図書館は子どもたちの心を開きます。
図書館は大きな見返りを提供します。             
図書館はコミュニティを作ります。
図書館は家族のきずなを強めます。
図書館は一人ひとりを刺激します。
図書館は心の安息の場を提供します。
図書館は過去を保存します。

が、その12か条。

10月に市民会館で開催された講演会「地域の中の図書館」で講師の山口源治郎さん(東京学芸大学教授・図書館情報学)が、公共図書館が目指す分かりやすい指標として示されていました。

本を探すだけであれば、アマゾンのほうが使いやすいですし、貸本屋機能だけであれば人件費を含めて多額の事業費を使う必要はありません。暇つぶしの場所でいいのであれば、図書館以外にも場所はあるはずです。

そこで考えなくてはならないが、図書館が目指すのは何か、ということです。

武蔵野プレイスが建設される理由には、図書館を中心とした施設であり、武蔵野市には三館構想があるからだ。西部図書館を廃止するのは、西部図書館を移転させて拡充するから、が、武蔵野市としての理由になっています。

しかし、拡充された三館が揃ったとして、何がどうなるのか。図書館は何を目指すのかという理念がまったく分からないのです。さらに言えば、三館構想は昭和60年に作られたもので、それからは大きな動きがなく、止まった状態とも言えるのです。

現在では、武蔵野プレイスの図書館機能部分は独立した図書館ではなく、中央図書館がいわば本店であり、支店となる図書館と考えられています。ですが、指定管理者制度を導入することになっていますので、単純に言えば支店を別会社が経営することになり、どう連携するのか。図書館行政として指導ができうるのかという組織的にはたいへん大きな問題が残されているのに、未だにどうしたいのか、明確ではない状況です。

細かい連携は、契約書という形で行うことが可能ですが、武蔵野市の図書館としての理念、目標をハッキリさせないことには、契約どころではなく、連携した図書館運営もできないはずです。

このことについて、11月の鉄道対策・農水省跡地利用特別委員会で質問をしたところ、指摘のとうりで理念などは考えていきたい、と理事者側から答弁がありました。一安心と期待をしたいのですが、もっと早く作るべきであったのではないでしょうか。

さて、講演会で山口さんは、プレイスについてのコメントも話されていました。図面を見ただけの感想でしかないことが前提ですが、課題が明確になったように思います。

それは、図書館機能として考えた場合ですが、何層にもなっている構造から、非効率になり、機能を全て殺すかもしれない、ということです。

図書館員をそれぞれのフロアに配置することでのランニングコストの増大。資料の連携ができなくなること。図書館利用者は、目的の本のある場所へ行くことを考えるので、ブラウジングはしないこと。利用者も図書館員も図書館を何層も歩くことはできないこと。図書館がどういう仕事をするか設定されていないことなどがあり、館全体をどうやってコントロールするのかという大きな課題があるということです。

山口さんは、コンセプトは悪くないが、どうしていくのだろうかと疑問をもたれていました。また、全部をコーディネーターできる人(館長)はいるのだろうか、それこそ5000万円ぐらいの給料を出してスカウトすべきだろう、とも話されていました。

何層になる図書館機能と他の機能を併せることでの問題については、、他の図書館の専門家、図書館の設計者にも話を伺いましたが、同様のことを話されていましたので、よく考える必要があるはずです。

ただし、あくまでも図書館として見た場合、です。知的創造拠点としてならどうなのか、も早急に考える必要もあるはずです。図書館は図書館、として考えれば解決はできるのですが、他の機能を併せようとしていることに課題の複雑さがあるのだと思います。

ソフト面など、現状での想定されている方針などは、12月の特別委員会で報告するとの答弁もありました。具体化への重要な作業となりますので、期待をしたいと思います。

41年間アメリカ図書館協会の会員となっている著者のブログ「高鷲忠美の研究室便り」には、アメリカ図書館協会によって実施された『「公共図書館利用」についての全国調査結果』が報告されています。

この記事によると、7割のアメリカ人が、公共図書館に大変満足しており、85%の人が公共図書館はもっと財源をもらうべきであると考え、三分の一以上のアメリカ人が、学校、道路、公園と比較して公共図書館を公共サービスのリストのトップに位置づけているのだそうです。

図書館の価値が評価されていることになります。
武蔵野市の図書館は、どうあるべきなのでしょうか。市民にとって今以上に必要と思われる図書館にしていくべきであり、そのためには理念を明確にすべきです。