図書館の指定管理者制度で考えた

第9回図書館総合展にでかけてきました。
新たな図書館機器やシステムの展示・提案のほか、各種のセミナーも開催されていました。テーマはさまざまですが、指定管理者制度に代表されるように図書館に新たな時代の波が押し寄せており、どう変わっていくか、変わったかに注目されていると思いました。

これらのなかで興味深かったのは、指定管理者制度を導入した図書館長からのプレゼンテーションでした。


指定管理者となった図書館からのプレゼンテーションを行っていたのは、国内12自治体の図書館指定管理者制度の受け手となっている最大手のTRC(㈱図書館流通センター)です。国内9ヶ所の図書館長が会場で、各自が15分程度、プレゼンテーションするというものでした。

ずべてを聞いたのではありませんが、聞いた範囲では、指定管理者制度による民間委託をしたことで、よりよい市民サービスが実施されている、いい図書館になるということがほとんどとなっていました。
例えば、図書館員がフレンドリーになった。カウンターの人員が増えた。展示が見やすくなった。市民へのアプローチ(読み聞かせ会など)が増えた。開館時間が延びたなどなどです。

業者からの報告ですから当然といえば当然ですが、良い面ばかりとの内容です。
でも、よく考えれば、これらは図書館であれば当然やるべきこと。

プレゼンテーションが終わった後に、ある館長と個別に話をさせていただき、指定管理者だから実現したというのもおかしな話ではないか、と質問をしてみました。

返答は、そのとおりだが、現実の多くの図書館は、当然のことができていない。理由は、図書館員として採用されたのではなく、公務員として採用され、あちらこちらと転属していくなかでの部署が図書館であり、図書館に思い入れない職員が多くなっている。
図書館が好きで職員になった人材がいる企業に任せたほうが、市民サービス向上になり、図書館として考えてみても内容が良くなるが現実だ、と話されていました。

この方は、公務員として図書館に勤めていたこともある人で、いわばヘッドハンティングのようにして現在の館長になっている方でした。図書館に誇りを持ち、働き続けてきた人といえるでしょう。

行政が図書館を職場のひとつでしかなく、専門職として育てようとしていないことに課題があることになります。自治体によっては、図書館を“島流し”的な部署にしていたり人と接することに課題がある人を配属させるという話を聞きますから、行政サービスの位置づけとして重要視していないことが、当然のことができない背景にもなっているのでしょう(武蔵野市というわけではありません。念のため)。

図書館内にごみが落ちていても、誰も拾おうとしないのだから、とこの方は嘆いていました。

と考えると、図書館が好きで専門職員を導入できる民間委託や指定管理者制度が、コストも安くなり、じつは図書館にはいいのかもしれません。

しかし、現在の人たち、特に若い人がこのまま専門職として働き続けた場合、給料を上げることができるかどうかは別問題に思えました。
コストだけを考えれば、民間委託や指定管理者制度を導入すれば、最初は安く上がります。これは、若い人を採用するから可能なことであって、長期間続けるとなると、積み上げていくスキルへの対価をどうするかが問われることになります。給料の安い人、スキルがまだないような人をとっかえひっかえ採用していては、サービスの質は上がることがないはずです。

図書館を無料の貸本屋、本の貸し出しをすればいいとの認識であるなら良いのかもしれませんが、当然のことができなくなることも十分考えられます。指定管理者制度が始まって約3年。長期間たった後で、給料をどうしていくか。図書館で収益を上げることはできませんから、当然ながら委託する行政がどう考えるかで、今後が変わることになります。
図書館員が必ず公務員であるべき、とは思いませんが、スキルに対しては対価を支払うべき。これから行政の度量が試されることになります。

そして、民間委託、指定管理者制度のほうがいい図書館になる、と思われてしまう職員をどう変えていくかも問われているのだと思います。

指定管理者制度に良い面があると思いましたが、課題は残されています。