再び十日町のNPO給食 

6325a96d.jpg十日町市で実施されているNPO運営による給食事業を文教委員会で視察してきました。
運営に当たっている「NPOネットワーク雪の里」には、2006年の7月に個人で伺っていますが、その後、新たな給食センターを委託されたことでの変化。行政側の考えも聞きたいと考え文教委員会として視察をしました。


十日町市には現在、17の自校給食設備と小中学校に配送する4つの給食センターがあります。他の自治体と同様に市業務のスリム化、経費削減が求められているため、自校方式では職員を嘱託化し、センターは民間委託する方針としています。

これまでに四つのセンターのうち一箇所を民間業者(2001年)、一箇所を「NPO雪の里」に委託(2003年)。今年4月からは、もう一箇所を「NPO雪の里」に委託し、2008年度からは残りの一箇所も民間委託する予定となっています。

委託内容は、調理、給食の配送・回収、食器・器具の洗浄・消毒・保管、施設・設備の清掃・点検・整備、残飯の処理など。新たに給食を実施するのではないため民間に設備を新設を求めるのではなく、行政施設を委託する方式で公設民営型の委託となっています。
視察した「中央学校給食センター」は老朽化したセンターの建て替えとして今年4月に新設された施設です。

「NPO雪の里」については、以前のレポートをご参照していただくとして、なぜNPOを選択したのか、行政側に聞いてみました。

もっとも大きな理由となるのは、入札で民間業者よりも低額であったこと、となりますが、このこと以外にも下記のメリットがあること。また、問題点があったもののどう判断したのかが分かりました。

○選択理由
(1)NPOへの支援
 市業務の民間委託を進めようとしたとき、民間企業の委託になじまない業務も出てくる。そうした業務の引き受け先として、また、市民の社会参加の場としてNPOの役割は大きい。
 十日町市では、これまでNPO設立の動きが鈍く、市民の地域づくりや社会貢献のエネルギーが顕著化しなかったことから、市もNPO設立の指導を行うなどの支援を行っていた。さらなる支援の一環として、学校業務を委託することにした。
 
(2)成果を検証するうえでの委託経費の透明性
 委託業務の成果を検証するうえで、経費の透明性は重要である。民間業者の経営内容を明らかにすることについては限界があるが、NPOの場合、運営に関する情報を公開することが原則になっている。
 
(3)受託者間の競争を期待
 2001年度から十日町学校給食センターの調理業務、配送業務をしない業者に委託している。水沢学校給食センターの民間委託にあたり、市内ではこの業者を「NPO雪の里」しか受託希望がなかった。
 今後も学校業務の民間委託を進めていくことを考えると初期で一社独占は好ましくなく、「NOP雪の里」に委託することで、株式会社とNPOという違いはあるが、よりよい学校給食の実現のために互いに競争してくれることが期待できる。
 
(4)保護者などの理解を得やすい
 学校給食業務の民間委託にあたっては、保護者などから反撥も予想されるが、非営利、情報公開を原則とするNPOの方が、保護者の理解を得られやすい。
 
 
○問題点 
(1)実績
 「NPO雪の里」がこれまで学校給食業務の受託の経験がない。
 →NPOが調理、配送業務に従事する職員を新規に採用する際に経験者を優先的に採用すれば受託可能と判断。
 
(2)事務局態勢
「NPO雪の里」は2001年2月に認証後、大きな事業を実施しておらず、事務局態勢の弱さがある。
→事務所設備、事務局員態勢などの充実計画について「NPO雪の里」から聞き取り調査を行い受託可能と判断。

(3)納入食材組合との関係
 十日町学校給食センターに食材を納入している十日町中央食材納入組合の加入商店主は、全員が「NPO雪の里」の会員である。調理業務受託業者と食材納入業者が同一であることは、食材のチェックが甘くなるのではないか。
 →納入組合の商店主と「NPO雪の里」とは無関係であることを確認、不都合はないと判断。
 
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   ◆
   
■NPOへの支援と考えると給食は良いツールになるのだと思います。商店主など地域を巻き込むことで学校への理解が深まることが、以前に伺っていたときに分かっていましたので行政側もこの点を評価していることが分かりました。

しかし、食材納入業者との関係を問題視していたことは今回の視察で新たな課題として考えさせられました。

確かに、“癒着 になってしまえば、どのような食材になってしまうか分からない危険性があります。これは、民間に委託することにより、納入食材まで公の目が届かないことになるからです。赤福や白い恋人、明確な産地が分からないなど食品全体への信頼度が薄れている昨今ですから、武蔵野市が民間委託をするとなると大きな課題になるはずです。民間委託にすればそれでいい、との話ではないのですから。

「NPO雪の里」では、商店主や市場関係者が自分たちの子どもや孫のために良い食材を、との想いで一般の競りに出る前の食材を確保できているというメリットがあります(※)。それは、契約による担保が取られているのではなく、納入業者が、市内の人であり食べる子どもが目に浮かぶことで善意の作用が働いていることが理由となっています。

(※競りを待つと給食の調理時間に間に合わず、翌日の食材となってしまう。競りのまえに確保することで新鮮な食材を入手できる)

このような作用をどう確実にするのか。民間業者ならできるのか。NPOであれば、より確かになりやすいといえますが、絶対とはなりません。確かな食材が必要と考えるのであれば、どのように担保していくのか武蔵野市では大きな課題となりそうです。

現状で考えれば、全面的に民間委託をするのではなく、メニューや食材の指定だけでなく、納入まで市として責任を持つ体制をとるべきだと思います。となれば、正規職員から嘱託職員へと構成を変えていくことで経費を低くする現行の方式をこのまま続けていくことになります。

ただし、正規雇用ではありませんから、経験によるスキルを職員に求めることはできなくなります(嘱託は期間限定の職員が前提です)。よりよい給食を、と考えると正規ではないデメリットもあることも考えなくてはなりません。

その答えとして、嘱託職員を正規として雇用できるシステムが「NPO雪の里」の事業メリットといえますが、スキルを持った職員には相応の対価、給料が必要となる新たな課題も生まれてきます。
「NPO雪の里」としても受託した当初は経験年数が少ないことから人件費を抑えることができていますが、年数がたつことで人件費の増額が求められています。十日町市の場合は、業務委託ですから、この費用増額分をどの程度受け入れていくのかが問われることになります。

2003年に「NPO雪の里」が受託した水沢学校給食センターですが、当初は約250万円の「収益」(民間会社でいう利益。非営利であるため市に返還している)がありましたが、2006年度からは委託料と同額となり「収益」は出ていません。
今後、同じ職員を継続して雇用するとなると委託料を上げる必要性が出てきていますが、市としては判断はできていないのです。

NPOを含め、民間委託は経費削減が大きな理由です。しかし、しっかりとした事業を継続していくには、スキルを持った職員が必要となり相応の給料は必要になってきます。とにかく経費を削減、人件費を削減することで、雇用不安や格差社会が生まれている背景もあると思います。公務員並みの給料をすべてに保障しろとは思いませんが、スキルを持った人を雇用するにはいくらが適正なのか。安ければそれだけは良いのではなく、真剣に考えなくてはならない時期になっているのではないでしょうか。

「NPO雪の里」は、民間委託への懸念を持っていた元職員の事務局長の三谷さんがいたことで成立していると言っても過言ではないでしょう。教育委員会に勤務し学校給食に携わっていたこと、NPO支援事業も行っていたこと。地元育ちで商店主などが昔の同級生であったことなど個人的な要素が大きなウエートを占めています。そして、理事となっている地元の人たちが無報酬であることが民間業者への競争力となっています。

武蔵野市だけではなく、給食のNPO運営という選択肢を考える場合、人材が実は大きな成功要因になることは確かだといえます。給食ではなく、他の事業でも同様です。
安上がりではなく、事業内容にあった対価を考えられるか。単純に民間委託するのではなく、市民との協働との認識で考えられるのか。これは行政、議会、広くは市民にも問われることになりそうです。

写真上
 試食した十日町市中央学校給食センターでの中学生向け給食。なつかしいソフト麺とミートソース。
 
 下
 今年4月にオープンした中央学校給食センター。旧センターの嘱託職員をNPOで正規雇用している。