中学校給食検討委員会の提言

07年3月まで設置されていた武蔵野市中学校給食検討委員会の報告書が出され、教育委員会への提言がありました。
報告書では現状の食環境が変化していることから、弁当の意義は認めつつも摂取すべき栄養バランスの取れた食事を示し提供できる意義は大きいとしており、給食の重要性があらためて書かれています。
また、民間への外注弁当方式による給食は、現在の質の高い小学校給食と同様の質を望むこと、温かい汁物の提供が難しいことから検討対象から外れていることが注目されます。

この報告書を受け、教育委員会がどう判断するのか。次にどのような動きになるのかが注目されます。


   ◆これまでの背景

武蔵野市では、長年に渡って、弁当による親子の絆のほうが大切、費用がかかりすぎるなどの理由で中学校給食は必要ないとしてきました。これは22年間続いた前市長のポリシーが顕著に現れた例とも言えます。

同様に1986年に教育委員会が設置した「武蔵野市立中学校給食検討委員会」が、「単独調理方式でランチルームを設置し、複数メニューの選択給食の条件が満たされるならば、中学校給食を実施する」との提言を出したことを受け、教育委員会は「中学校の完全給食は、教育的見地から考えて実施すべきではない」という結論を出し、実施しないとの立場を続けてきました。

そこへ中学校給食実施を公約とした邑上市長が誕生したこと。対立候補も実施、もしくは実施の検討という言葉を使い、実施を求める議員も増えたことから実施か否かが政治的対立ではなくなった政治的な背景があります。

同委員会は、中学校給食実施への第一ステップとして教育委員会が設置したのもので、公立中学校PTAの代表、公募市民、教員、学識経験者などで構成され、中学校給食の意義、実施方式、実施時期などを検討してきました。

   ◆報告書を読んでみて

今回の報告書を読んでみて思うのは、意地悪く書けば、実施しないとしてきたことを実施への方向転換するための理由付けがたくさん書いていあるなぁ、ということです。意地悪くではなく、普通に読めば、武蔵野市の中学生だけの問題ではなく、日本の社会的な問題が書かれています。給食だけの問題ではなく、社会全体として考える必要があるとさえ思えた内容でした。資料も添付されており、給食を考える上で非常に価値の高い内容だと思います。

例えば、ファーストフードやコンビニが食卓のかわりになってきている現状。コマーシャルやバラエティ情報番組などの情報によって子どもの嗜好が操作されていること。家庭料理も加工食に替わりつつあり、食材の由来にこだわる視点を弱め、食料自給率低下や生活習慣病への懸念など現在の社会状況について、私の作る晩ご飯の実情も含めて、考えさせられることも書かれています。

これを再認識しないことには、現在の食環境や子ども食環境は改善しないことになるのだと思います。家庭のことは家庭でやるべき、との意見もありますが、そうも言っていられないのが実情でしょう。そのためにも給食は重要なのです。

     ◆ポイントは

細かな内容は、報告書を読んでいただくとして、実際に実施するとなるとポイントになることがいくつかありました。概略版からいくつか言葉をピックアップしまとめてみました(言葉は抜粋。意味がつながるように書き換えている箇所もあります。正式には報告書をご覧下さい)。

○給食の必要性、重要性

・学校給食は、食糧不足を背景にして子どもたちの栄養改善を目的として始まったが、食生活の乱れや栄養バランスの偏りなどが課題となり、食育基本法の施行などによって子どもたちの心身の健全な発達と明るい地域社会づくりのためにも、学校給食の役割と意義について問い直すべき局面を迎えている。

・中学生の食生活の課題として朝食欠食の問題やダイエットの問題などがある。給食でその年代の子どもたちが摂取すべき栄養バランスのとれた食事を示し、提供できる意義は大きい。

・昼食は、一番活動しているときに摂る大事な食事として、1 日の食事摂取基準の3 分の1 を摂るべき。1日3回の食事において、バランスのとれた食事を摂ることが基本だが、朝夕の食事に課題がある状況では、特に重要な食事と考えられる。

・厚生労働省の国民栄養調査では、14歳までの栄養摂取の状況が15歳以上に比べて良い。その理由として、89.1%の小中学校で給食が実施されている点が大きいと考えられ、子どもたちの成長に給食が有効な役割を果たしていることがわかる。

・弁当は、衛生上昼までもたせる制約などがあり、栄養バランスのとれた弁当作りは難しく、弁当での栄養バランスの不足分を朝・夕食で摂取することも現状では難しい。

・食の指導の必要性が強く指摘される中で、食育は重要な教育課題の一つとして位置づけられた。

・食生活の中心が家庭にあり、保護者が子どもの健康や成長を考えて食事や弁当を作ることは意義がある。

・温かい食事を摂れることが給食の大きな利点であり、栄養バランスに配慮された給食は、成長期の子どもたちの発達を考えた昼食として大きな利点がある。

・多様な献立による和食中心の給食は、食文化の伝承や伝統的な食習慣づくりなどの食育に寄与することができる。また、小中学校時代にいろいろな食べ物を食べる機会や経験
を持つことは、将来の食生活を豊かにする。

○実施するにあたっての課題

・委員会の大方は、武蔵野市の小学校給食を評価するもので、安全な食材選定や和食中心で手作りにこだわる献立などを中学校でも実施してほしいというものであった。その一方で、小学生と中学生では、味覚の差などもあるので調理施設の課題などを考慮したうえで、別献立で考えてほしい。

・自校方式と共同調理場方式については、現在の武蔵野市の給食の内容と食育活動の実践を評価するため、自校方式にこだわらず、共同調理場を活用した方策を探ること。

・現在の共同調理場の提供食数には限界があり、その打開策については専門的に検討することを行政に委ねる。実施を急ぐあまり拙速にならず、より良い給食を目指すべきであるという意見が出された。

・一部の市で実施している民間への外注弁当方式については、現在の小学校の給食と同様の質の高い給食を望む意見や、給食の大きな利点である「温かい汁物」の提供が難しいことなどから、検討対象から外れた。

○給食の運営

・学校給食の趣旨を考えると、栄養バランスに配慮された給食を全員が食べる、全員一斉給食に意義があるが、アレルギーや、保護者の思いが込められた弁当への配慮から、弁当も選択できる選択方式の必要性がある。

・ランチルームは、設置が困難であり中長期的課題。

・給食費は、他市の状況などから1 食あたり300 円前後が予想される。給食費の徴収方法については、事務負担が少なく、より確実に徴収できる方法を今後の検討に委ねたい。

・施設や運営に要する公費負担の軽減は考えるべき課題。小学校給食も含めて、質を落とすことなく効率的運用の視点も軽視できない。

○実施上の課題

・新たに配膳や片付けの時間を必要とするため、学校時程への対応や配慮が必要。

・配膳室の改修や、荷物用エレベーターの整備などの課題がある。改修にあたっては、教育活動への影響、費用対効果なども考えた対応が求められる。

○家庭

・中学校給食が実施されても、食の基本が家庭にあることは変わるものではない。給食だけではなく、家庭の朝食と夕食が充実して初めて中学生の心身を健全に発達させることができる。保護者の食への関心を高め意識改革を促していく必要性がある。

    ◆提言

これらの内容から、同委員会は、下記の提言をまとめています。

1.成長期の中学生の心身の健全な発達には、望ましい食習慣の形成が必要であり、そのためには中学校で完全給食を実施することを望む。

2.中学校給食の実施にあたっては、現在、武蔵野市が小学生に提供している給食と同等の質の高い給食の実施を望む。

3.中学校給食が実施されたとしても、保護者が子どもの健康や成長を考えて作った弁当の持つ意義は否定されるものではない。弁当を望む家庭やアレルギーなどによって弁当が必要な生徒に対しての配慮を望む。

4.中学校給食の実施時期については、より良い給食の計画的な実施を目指し、急ぐあまり拙速になることのない着実な実施と、その上での早期実施に向けた努力を望む。

5.昼食だけではなく、すべての食事について中学生の健全な食生活が確保されるよう、家庭や地域に対する食育の啓発を望む。

6.中学校給食の実施に際しては、給食が食の指導の実践の場であり、重要な教育活動の場であることを踏まえ、総合的視点を持った教育活動の推進を望む。

   ◆今後の気になること

この提言は教育委員会に向けて出されたものです。受けた教育委員会がどう判断するのかが注目されます。給食は教育のひとつとして実施されますので、教育委員会が決めないことにはいくら市長が実施したいとしても実施ができないのです。19年度予算には、一部試行や実施検討委員会予算が盛り込まれていますが、やるやらないの判断は教育委員会が判断しなくてはなりません。

すでに、2006年3月に中学校給食を実施して欲しいと教育委員会に出された陳情を意見付きで採択しているのですから、迷っていることはなく早急に態度を示すべきでしょう。

【参考】教育委員会も中学校給食実施へ賛成

もうひとつ、気になるが、調理場の耐震です。

2006年12月に武蔵野市の学校施設の耐震診断結果が出され、学校校舎だけでなく調理場も耐震補強をしなくてはならなくなったのです。

中学校給食実施への改修工事と耐震補強工事があることになり、どちらも後回しにはできません。どう整合性をつけていくのか。早期の実施が求められなか、行政判断が注目されます。当然ですが、議員としても注目しより良い方法を探りたいと思います。

【参考】小中学校 再び耐震工事へ 建物の維持費、中学校給食は大丈夫?

報告書が出されたことで、次のステップへ進んだ中学校給食です。食育重視で高い質を求めるべきとの内容は高く評価したいと思います。しかし、課題もまだまだあり、新議会がこの方向性をどう考えていくかも注目されるでしょう。

【参考】武蔵野市中学校給食検討委員会(給食課のページ)