福祉三団体のヒアリングから日本の福祉が見える

9月19日に福祉三団体のヒアリングが行われました。
ヒアリングの冒頭で、先の市議会厚生委員会で再編への異議や福祉公社を解散しないで欲しいとの陳情が意見付きで採択されたことが説明され、有識者会議は福祉公社を解散すべきとしたワーキングチーム報告書について、重要な参考資料だが内容には縛られない。原案として採用はしていない。議会の判断は、尊重するが市や議員の発言には踏み込まない。ワーキングチーム報告書への返答はしないことを確認した、と説明がありました。

有識者会議は福祉三団体の再編などの方針を検討することを目的として設置されています。先の委員会で福祉公社再編ありきではない、との市長答弁やこの日の確認を聞くと、有識者会議の目的自体があいまいになったと思えてきました。行財政改革は必要ですが、今一度、福祉とは何かを考える必要があると思います。

福祉三団体の再編は、ワーキングチームの結論が強引でしたし、その前にやることがあるだろうと思います。何よりも、福祉公社を解散させて再編するという結論がなぜ出されたのかという疑問も残っています。


福祉三団体とは、武蔵野市が財政援助を行っている財団法人武蔵野市福祉公社、社会福祉法人武蔵野市民社会福祉協議会(市民社協)、社会福祉法人武蔵野のことで行財政改革として福祉公社を解散させて再編するという結論が、庁内ワーキングチームによる報告書で出され、再編の方針などを検討するために有識者会議が設置されていました。

市の説明によれば、同チームは主任クラスの若手により構成され、あくまでもたたき台として作成したとしています。たたき台の必要性は認めますが、現場や利用者の意見も聞かずに福祉公社を解散させて再編するというひとつだけの結論を報告したことは乱暴すぎるのではないでしょうか。たたき台であるのなら、複数の選択肢を考え、有識者会議など次の段階で結論を求めるべきです。

この日のヒアリングでは、報告書には縛られない、と各団体に有識者から説明がありました。ですが、どの団体も報告書への反論が主で内容もおかしい。訂正してもらいたいという強い思いがありました。それぞれ自分たちの仕事に誇りを持っていることも分かりました。

何よりも共通しているのは、市の行うべき事業をアウトソーシングとしてやって来た。市の財政援助だけでなく市からの派遣職員が団体の中核を構成しており経営には市が深く関わっている。福祉なので儲ける感覚は育成されていない。自立への指導は一度もない。すぐに自立は暴言だ、という認識でした。

ヒアリングでは、それぞれの団体から意見が出されましたが、私が印象に残っているは次のような意見でした(聞き取ったものですので正式には議事録をご参照下さい)。

・福祉公社
内部でも経営改善のための会議を開いている。
利用者が減った原因は介護保険7%助成により安く利用できるサービスへ流れた結果だ。7%助成がなくなった現在、介護保険でカバーできないサービスを提供できる公社の存在をなくして良いのか。
没後のフォローまでもできる仕組みは親族のいない人への最後の砦。

・市民社協
第三者評価を実施しているのは市の条例で決められている。
福祉マインドを広げるには、事業型ではだめで調整型の市民社協の必要性がある。
社協に市民という字があるのは武蔵野市だけで市民が主体であることを示している。必要か否かは市民に聞いてもらいたい。
社共はボランティアのネットワーク、他は福祉の実戦部隊だといわれてきた。

・(社)武蔵野
市がやるべき障害者福祉施設のイニシャルコストを市が負担しないようにと事業を行ってきた。制度的には不十分で便宜的に作られてきた。
多様な利用者がいる。知的障害者のうち自閉症が多いのが武蔵野の特徴。複合施設であるため人件費を落とすことは、本人、周りの利用者への危険がある。人件費削減は一定の限度がある。
高齢者施設は見る機会はあるだろうが障害者の通所施設をみたことがないのでは。どのような人が通われて職員がどう仕事をしているか見る必要があるはずだ。これだけ手がかかることを分かって欲しい。高齢者と違い手がかかる方々がいることを理解して欲しい。

意見の中には、強いメッセージが込められた内容もありました。
例えば、スエーデンのある作業療法士の言葉として、スエーデンの福祉は必要なケーキを丸ごと配るもの。最初から切ってはダメというものでした。与える方が、必要な量を決めつけて配分するのではなく、必要な人、現場で考えて配分すべきということなのだと思います(ケーキ自体が大きい必要がありますが)。

現状の福祉は、そもそも現場のニーズを反映しているのか。スエーデンでは 政府、自治体 公共機関それぞれが福祉国家を作るという使命感に燃えている。ニーズへの対応は、議員も提案している。NGO、NPO現場の実践をしている人々がオンブズマンの役目を持っている。メディアもきちんと報道している。この三位一体があるから福祉が進む。今の日本では福祉は進まない、との意見もありました。

福祉三団体の再編は、福祉のあり方、政策としてどう考えるかとの議論ともなっていたのです。

ヒアリングが終わった後で有識者会議で意見が交わされていました。

そのなかで、障害者の実体を知らないと言われている。三団体の事業をどれだけ知っていたかと思うと現場を知りたい。三団体視察が必要だ。一般市民、利用者の意見も必要ではないか。拙速はいけない時間をかけるべき。

厳しい意見を持っているのが分かった。10年、20年後、介護保険などがあり生き残るビジョンを詳しく知りたかった。役所が気になっているはそこだろう。

統廃合は難しい。事業をどういう形でやるのが効率的か、住民にとっていいのかを議論をして方向性をだすのがいいのでは。軽々にはいえない。一定の現実的な方向性とこの程度の効率化ができるとの目安を考えるべきでは。

誇りをもっていることが伝わった。認識を深めることができた。税金を使っていることへの整合性をどうつけるかの議論を深めたい。

という内容が主で、今回を見る限りではすぐに公社を解散し再編にはならないのでは、と思えました。当初は、方向が確定しておりワーキングチーム報告書を実施するためのアリバイ作り的な会議と思えましたが、内容が大きく変わったようにも思えました。
市議会には、福祉に金をかけすぎとの声もあります。どうなるかは分かりませんが、再編ありきではなく市民にとって何がいいのかという有識者会議の議論に期待したいと思います。有識者会議として三団体を視察することも決まりました。

ヒアリングを聞いていた思ったのは、それぞれの団体でより効率化すること、自主事業などで収益性を上げることが求められているのは事実ですし必要がありますが、福祉とは何かを確かめる必要があることです。

今回の再編では、強者による弱者いじめ、勝ち組による負け組排除という雰囲気を感じました。外部団体の効率化だけではなく市役所の効率化については何も言及がないのです。

地方自治法の第一条の二には「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として~」とあります。効率化、財政再建は重要であり求められていますが、地方自治体が何をすべきなのか。政治はどこを向くべきか、を考えるべきだと思います。

さらに言えば、有権者が勝ち組優先施策を求めるか、否かを選択するかにかかっているのだと思います。

日本は新しい首相が誕生しどのような国なっていくのか。ヒアリングから国のことが思えてなりません。

【参考】福祉公社解散は、見直しを